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母子感染のリスク減らし幼子の後遺症を防ぎたい

母子感染のリスク減らし幼子の後遺症を防ぎたい

神戸大学大学院 医学研究科外科系講座 産科婦人科学分野
教授(やまだ・ひでと)

1984年北海道大学医学部卒業。同大学病院、米マサチューセッツ州ハーバード医学校、
北海道大学大学院医学研究科産科生殖医学分野などを経て、2009年から現職。

 母子感染する疾患「TОRCH(トーチ)症候群」。その多数を占める、サイトメガロウイルス感染の新生児尿検査とトキソプラズマ感染の抗原虫薬治療が、それぞれ保険適用となった。立役者の1人、山田秀人教授は教室を率いて11年。地域の周産期医療や、研究の進捗(しんちょく)についても聞いた。

―TОRCH症候群について。

 トキソプラズマ、その他(梅毒と、パルボウイルスB19など)、風疹、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスの頭文字から名付けられました。この患者さんの分娩管理や新生児治療を行っています。中でも多い二つの感染症に関して近年、大きな進展がありました。

 一つは寄生虫の一種であるトキソプラズマ。治療薬が2018年10月に保険収載され、今年1月にマニュアルが改定されました。私が国内で初めてその土台となる妊婦抗体スクリーニングを開始して15年。妊婦が抗原虫薬を服用しやすくなったことで、さらに妊娠中に検査を受ける人が増えればいいですね。

―もう一つがCMV。年間1000人に後遺症が発生するそうです。

 CMVは、唾液や尿を通して多くが子どもの頃に感染するウイルス。妊娠中に感染すると胎児に影響が出る場合があります。出生後に見逃されて適切に対処できず、難聴や精神遅滞などを引き起こす例も多かったのです。実際、4歳児の難聴の原因の4分の1はCMVです。そこで新生児に特定の症状がある場合に行う尿検査が2018年、保険適用となりました。

 私たちが目指すのは、その先の治療法の確立です。2009年から関連施設と共に抗ウイルス薬治療を行い、56人の感染児のうち症状のある23人中19人を治療したところ、正常発達が37%、軽度後遺症が21%、計58%に効果があった。これを受け、今年1月から六つの大学で医師主導治験を始めたところです。

 当初は初感染の妊婦からより多くの重症感染児が生まれると思われていましたが、私たちの研究では、再活性化・再感染によって発生する方が多いことも分かっています。

 妊婦が気付かないうちに感染する、あるいはウイルスの再活性化・再感染というのは、防ぎようがない。ですから、なるべく出生後すぐに検査し、生後1カ月以内の早期治療につなげることが肝心です。

 今、全国的に推奨されているのは、妊娠中の感染兆候や胎児発育不全、超音波検査での異常所見や、新生児聴覚スクリーニングで要再検になった場合に保険適用で尿検査すること。ですが、要件に切迫流産と早産も加えた方が良いことを1月に論文にまとめ、提案しているところです。
 現在、感染リスクのある新生児に尿検査を行う施設は7割程度。他の施設に広めるため、啓発にも力を入れていきます。さらに医師主導治験を成功させ、3年後をめどに抗ウイルス薬の保険適用を目指したいですね。
 登山に例えれば今、ようやく6合目といったところ。ここまでいいデータが出ているのは、スタッフや小児科の先生方の力添えがあってこそ。今後も地道に続けていきます。

―兵庫県における周産期医療の現状は。

 大学医学部附属病院は兵庫県に6施設ある総合周産期母子医療センターの一つ。中でも、重症の母体合併症や胎児異常などの搬送を数多く受け入れています。不育症や母子感染なども多いですね。年間分娩数は約600件です。

 当県では2006年から周産期医療情報システムの運用を開始。施設間で診療応需情報を共有しています。人口1000人に対する2018年の周産期死亡率は全国3・3に対し兵庫県は2・7、新生児死亡率は全国0・9に対し0・7と、いずれも低い率を維持。産婦人科と小児科がうまく連携できているといえるでしょう。

神戸大学大学院 医学研究科外科系講座 産科婦人科学分野
神戸市中央区楠町7―5―1
☎078―382―5111(大代表)
http://www.med.kobe-u.ac.jp/obgyn/

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