医療法人社団総生会
菅 泰博 理事長(すが・やすひろ)
2000年東京医科大学卒業、2008年同大学院医学研究科修了。
同外科学第一講座(現:呼吸器外科・甲状腺外科)、神奈川県立がんセンター、
国際医療福祉大学三田病院などを経て、
2012年医療法人社団総生会麻生総合病院病院長、2014年から現職。
理事長となって6年。麻生総合病院の病院長に就いてからは8年となった。段階を追って、着実に法人に変化をもたらしてきたリーダーは、今、「人事制度改革」という大きな仕事に着手しようとしている。
―これまでの取り組みを。
麻生総合病院の病院長に就任した時、「5つの『高める』」を、法人の目標として掲げました。五つとは、「法人の社会的価値」「経営の透明性」「コンプライアンス(法令遵守)の意識」「公平性」「職員のロイヤリティ」。最初に着手したのが「経営の透明性」です。
まず病院内の情報を可能な限り職員と共有することから開始。安全対策、出張手続きなどのマニュアル類や就業規則、労使協定などをすべてデータ化し、院内の端末から閲覧可能に。属人化していた業務の減少にもつながっています。
次に共有したのが、患者さんの情報。電子カルテの構成を変更し、それぞれの患者さんのカルテに、「カンファレンス」という項目を設けました。病棟機能に対応した入院期限、その患者さんに関する話し合いの内容、それぞれの職種の視点で気づいたことなどを、患者さんに関わるさまざまな診療科・職種の人が掲示板のように書き込んでいきます。
一人の患者さんの治療方針を、一職種だけの視点で判断すると、誤った方向に導かれてしまうこともあります。情報共有には、それを防ぐ効果もあります。
また、共有した情報をもとに、それぞれの職種がインフォームドコンセントを実施することで、患者さんやご家族に病院として一体感ある説明ができているとも感じています。
情報共有はコンプライアンスにおいても重要です。ルールを共有・明示することで、根拠を持って問題点を指摘できる。「ハラスメントは許さない」ということも常々職員に伝えており、正規職員にはハラスメント研修の受講を指示。9割ほどが研修を終えています。
また、退職者に対する面談を直属の上司、他部署の管理職と2段階で実施。その報告を受けることで、「真の退職理由」を把握することも心掛けています。本当の理由を知ることで、離職率を下げるための効果的な対策が検討できると思っています。
―現在、注力されていることは。
まさに今、取り組んでいるのが「公平性を高める」ことです。個人病院だったころの名残で、いまだ不統一な面がある賃金制度などに着手しようとしているところ。目標としているのは、働き方改革でも言われている「同一労働同一賃金」です。
一般的に医療・介護業界の人件費は増加傾向であり、一方で、次の設備投資も考えなければならない。診療報酬改定の動向を注視していても、今後、経営的に右肩上がりでいけるほど甘くはないと感じています。
そこで、この4月、人事制度改革プロジェクトを発足させます。人事考課の評価項目に、求める職員像10項目を盛り込み、賞与に反映させることはできないか。若手を含め、頑張れば昇給できる仕組みを実現したい。そんなことを考え、検討を重ねています。
職員には苦笑いされることもあるのですが(笑)、ラグビーW杯日本代表チームのスローガンにあやかって、法人の2020年の目標は「ONE総生会への意識改革」。
救急医療と整形外科を強化する麻生総合病院、運動器疾患だけでなく脳血管疾患の患者受け入れを充実させる麻生リハビリ総合病院。さらには訪問看護ステーションや介護付き有料老人ホームなど、法人内にはさまざまな機能を持った施設があります。
リアルタイムなベッドの空き状況、月ごとの平均在院日数、その日の予定入退院、稼働率目標など、法人全体の動きも各施設設置の端末で見ることができます。人事制度改革の実現で、それぞれの職員の希望するキャリアや家庭環境などに応じた異動も円滑になるでしょう。職員が生き生きと働き続けることができる法人を目指していきたいと思っています。

医療法人社団総生会
神奈川県川崎市麻生区上麻生6―25―1
☎044―987―2522(代表)
https://www.souseikai.net/