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段階を踏んで技術と判断力を養う

段階を踏んで技術と判断力を養う

杏林大学医学部脳神経外科 塩川 芳昭 主任教授(しおかわ・よしあき)
1982年東京大学医学部卒業。スウェーデン・ルンド大学脳神経外科、
富士脳障害研究所附属病院などを経て、2003年から現職。

 国民の死因の上位であり、患者数が今後20年以上にわたり増加すると予測されている脳卒中をはじめ、さまざまな脳神経疾患の治療に取り組む杏林大学医学部脳神経外科。塩川芳昭主任教授は、「生まれ変わっても脳神経外科医に」と語る。

―杏林大学脳神経外科の特徴や取り組みは。

 当大学の脳神経外科では、脳卒中と脳腫瘍の2本柱の診療体制を確立しました。

 脳卒中には2種類あります。脳内出血やくも膜下出血などの血管が切れる「出血性脳卒中」と、脳梗塞や脳血栓などの血管が詰まる「虚血性脳卒中」です。

 脳卒中がなぜ問題か。それは死因の上位であると同時に、生存者にも重篤な後遺症を残すことがあるからです。われわれは、2種類の脳卒中に対応できる体制を整えています。また、院内に脳卒中センターがあり、救急外来に搬送されたすべての脳卒中患者に24時間365日対応しています。脳卒中は時間との勝負。病院内での多職種共同のチーム医療体制を整えることはもちろん、院外の地域医療連携も積極的に進めています。

―後進の育成について。

 手術について言うと、結果が同じなら、たとえ時間がかかっても若手にやらせるという主義でやっています。もちろん術前計画をしっかり立てますし、技術的にも水準をクリアしている人に限りますが、徐々に段階を踏み、経験を積ませながら技術と判断力を養います。

 経験がものをいう学問なので、手術内容を絵に描いて記録することを勧めています。私も1982年の初めての手術からこれまでの記録をずっと残してあり、そのファイルは数十冊になります。理解していないことは絵に描けない。術前に描き、術後も復習として記録すること。というのも、一人あたりの生涯手術件数は限られているからです。

 わが国の年間の手術総数や医師の数などの統計から単純計算すると、例えば、1人あたりの将来の脳動脈瘤(りゅう)経験総数は数百件のオーダーしかありません。限られた経験で早く上達するためには、記録という方法が有効だと思います。

―来年3月に開催される「第45回日本脳卒中学会学術集会」について。

 タイトルは「STROKE2020 脳卒中 力をひとつに Unity in Diversity」。

 多領域・多職種の「力」を結集します。「スパズム・シンポジウム」に加えて、「日本脳卒中の外科学会学術集会」も、同一会場で開催します。

 2018年12月、脳卒中・循環器病対策基本法が成立しました。病院側には診療体制の整備などが求められています。STROKE2020では、成立以降で明らかになった課題についても考えていきます。

―今後の展望は。

 脳神経外科診療のニーズは今後、ますます高まるでしょう。次世代に脳神経外科の魅力を伝えたいと考えています。

 現在は低侵襲で安全・確実な治療、そして満足度の高い治療が求められており、今後もその方向に進んでいくと思います。同時に、たとえ根治が難しかったとしても、その後の人生をどう過ごすかを重視し、医療の受け方を選択する方も増えています。私たち脳神経外科医ができること、すべきことは、たくさんあるのです。

 脳神経外科は手先の器用さが必要と思われがちです。でも、幼いころからはしを使っている日本人はポテンシャルが高く、たとえ自分が器用ではないと思っている人であっても、敬遠する必要はないと感じます。それ以上に必要なのは根気、丁寧さや思いやりではないでしょうか。

 脳神経外科に入りたいという人を1人でも増やし、新しい時代を切りひらく脳外科医を育てていきたいですね。

杏林大学医学部脳神経外科
東京都三鷹市新川6―20―2
☎0422―47―5511(代表)
http://plaza.umin.ac.jp/~kyorin-n/

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