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次世代の眼科医療を見据え世界に羽ばたく医師を育成

次世代の眼科医療を見据え世界に羽ばたく医師を育成

旭川医科大学   主任教授(やなぎ・やすお)
1995年東京大学医学部卒業。
国立国際医療センター研究所細胞組織再生医学研究部研究員などを経て、2018年から現職。
シンガポール国立眼科センターシニアクリニシャンなどを兼任。

 「眼科医療は今、大きな変革期です」と言う旭川医科大学眼科学講座の柳靖雄主任教授。国内外で重ねてきた経験に裏打ちされた言葉は重い。次世代の医療を見据え「世界に羽ばたく医師を育てたい」と強く願う。

―昨年10月着任。旭川医大眼科学講座の特徴は。

 本学の学長を務める吉田晃敏前眼科学講座教授を中心に臨床、研究ともに先進的な取り組みをしてきました。外来の診療機器一つとっても最新のものがそろった、患者さんにとっても大変恵まれた環境です。

 講座自体も、検査データのイメージング、つまり画像化や視覚化をする技術開発に優れています。特に、ドップラーOCT(D─OCT)の開発には注目していました。

 眼科の疾患の検査は眼底写真を撮影して判定するのが一般的です。一方、網膜の血流も注目されてはいたのですが、血流を測ることは大変難しいと考えられていました。

 D─OCTは、それを可能にし、しかも網膜血管の中を流れる赤血球の一粒一粒の絶対値を測定できる最先端の技術を取り入れた検査機器です。

 網膜の血流によって分かるのは眼科の疾患だけではありません。目は「全身の窓」とも言われますが、D─OCTによって全身のさまざまな異常を測定できるようになれば、脳血管疾患などを早期に発見する可能性も秘めています。

―シンガポールでの活動について。
 私の専門領域は「黄斑疾患」です。近年、黄斑疾患に対する認識は深まりつつありますが、研究を始めた1997年当時は黄斑疾患の診療を専門とする医師は少なく、治療の選択肢も限られていました。

 欧米では新しい治療法の研究が進められていました。しかし、それらはアジア人には応用できなかったのです。私は「アジア人に適した治療方法を研究したい」と考えるようになり、診療と基礎研究に注力。2004年には、東京大学の黄斑チームの責任者として研究プロジェクトに取り組みました。

 そうした中で、私は国内の環境では、臨床や研究に十分な時間を費やすのが難しい面があるとも感じていました。そこで、より研究に打ち込むために、2015年にシンガポール国立眼科センターへの異動を決意したのです。

 シンガポール国立眼科センターは、国を挙げて眼科医療を推進するために設立されました。世界各国から200人ほどの眼科医や研究者ら優秀な人材が集まっています。最新の検査機器などが整備されており、長期的なビジョンの下、創薬などを進めています。

 従来、眼科領域の研究はヨーロッパやアメリカが中心でした。ただ、その成果は世界中に還元されるわけではありません。

 例えば「加齢黄斑変性」の発症のメカニズムは、欧米人とアジア人では異なるのです。

 現在も、毎月シンガポールを訪れて研究を継続しています。アジア人に特有のメカニズムは、克服のための研究をアジアで取り組むことに意義がある。そう考えています。

―今後は。

 AIやビッグデータといった情報テクノロジー、バイオインフォマティクスなどが取り入れられることで眼科医療は今、大きな変革期にあると思います。このため次世代に活躍できる眼科医を育てることは私の大きな役割だと思います。

 1月から講座生をシンガポールへ留学させました。海外での私の経験が日本の医療との橋渡し役になればと思います。

 また、本学は、旭川を中心に道内に関連病院が約40施設あります。このネットワークを生かした新たな研究も始めます。

 世界で活躍できる眼科医を育て、いずれは旭川に戻って貢献してもらう。当講座の新たな使命です。



旭川医科大学 眼科学講座
北海道旭川市緑が丘東2条1―1―1
☎0166―65―2111(代表)
http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/ophtha/

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