千葉大学医学部附属病院
横手 幸太郎 病院長(よこて・こうたろう)
1988年千葉大学医学部卒業。
スウェーデン国立ウプサラ大学大学院博士課程修了などを経て、2020年から現職。
千葉大学副学長、同大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授兼任。
創立から146年の千葉大学医学部附属病院。2020年は、新たな中央診療棟の完成を控える。50年後、100年後を見据えた病院づくりを託された横手幸太郎新病院長の思いとは。
研究・開発で健康長寿に貢献
国内外で活躍する人材を多数輩出すると共に、医療技術の開発など多くの研究成果をあげてきた千葉大学医学部。横手病院長は「附属病院として、その役割を今後も果たし続ける責任があります」と語る。
2017年、同病院は臨床研究中核病院に承認された。「大学病院の価値を示す指標の一つが研究。診断や治療技術の開発などで、日本や世界の人々の健康長寿に貢献できるように力を尽くしたい」と強調する。
病院長に就くまでの9年間は、副病院長職を務めてきた。「総務、経営、将来計画策定、国際化など、良質な医療を提供するための、病院運営の手法を学ぶことができたと思います」と振り返る。
国際化への取り組みは「病院のグローバル化という新しい分野への挑戦だった」と語る。中東からの賓客の受け入れや、海外の学会に医師とメディカルスタッフを派遣する事業などに取り組んだ。「職員が国外に目を向けるようになり、視点や発言が変わっていった。病院のレベルアップにつながると実感しました」。今後も、力を入れたい分野の一つだという。
進む新棟建設 膨らむ期待感
2020年秋には、新中央診療棟が完成。2021年にオープンする。「手術室や救命救急センターの拡充、ICU(集中治療室)の充実…。われわれが求められている診療機能を、さらに向上させることができると思っています」。高度急性期、急性期医療の追求は、経営面でも重要となる。
2021年春には、医学部棟が完成し、これまで離れていた病院と医学部が、中央診療棟を経由してつながる形になる。
「移動が楽になり、医師が診療と研究を両立しやすい環境になる。診療でも研究でも教育でも、従来のハードではもう一歩届かなかった部分に届きやすくなると期待しています」
光がさすような診療、ケアを
自身は、生活習慣病や〝早老症〟とも呼ばれる遺伝性の難病「ウェルナー症候群」を専門とする。2012年には、「ウェルナー症候群の診断・診療ガイドライン」を作成した、第一人者だ。
主に思春期に発症し、白内障、脱毛など諸症状が出る希少疾患・ウェルナー症候群は、世界で確認されている患者の6〜8割が日本人。糖尿病や動脈硬化などの合併によって40〜50代で亡くなるケースが多いとされていたが、近年、改善が見られてきた。
専門としたきっかけは、臨床実習でウェルナー症候群の患者さんに初めて会ったこと。「原因不明で治療方法も確立されていない。何か救う手だてはないか」と、当時、この疾患を担当していた第2内科(現:内分泌代謝・血液・老年内科学)への入局を決めた。
心に残る患者がいる。それまで未確定だった病名をウェルナー症候群と確定させた。治療によって症状が緩和。表情が和らぎ、明るさを取り戻していった。「患者さんは、患者会の設立や難病指定へ向けた署名運動にまで活動を広げられました」。前向きに日々を送る患者の姿に、自身も大きな喜びを感じた。
「この病気には、まだ根本治療法は無いものの、予後を改善できます。まっくらだったところに光がさして、別の希望を持つことができる。正しい知識を伝え、ケアする。その継続が大事なのではないかと思っています」
千葉大学医学部附属病院
千葉市中央区亥鼻1-8-1 ☎043-222-7171(代表)
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