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次世代のリーダー像とは?育成の土壌づくりが進行中

次世代のリーダー像とは?育成の土壌づくりが進行中

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
教授(おおもり・こういち)
1985年京都大学医学部卒業、1992年同大学院医学研究科博士課程修了。
倉敷中央病院、米レノックス・ヒル病院、福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座教授などを経て、
2015年から現職。

 「耳鼻咽喉科・頭頸部外科を、もっと魅力的な診療科に磨き上げたい」。大森孝一教授のビジョンは明確だ。新しい医療を創出するとともに、組織のマネジメントや他科との連携などに力を発揮できる次世代のリーダーの育成。その土台となる臨床、研究、教育の底上げが着々と進んでいる。

力を入れているのは。

 教授に就任した翌年の2016年、22の関連病院のネットワーク強化に向けたプロジェクトをスタートさせました。

 重要な目的の一つが「診療の標準化」です。耳鼻咽喉科・頭頸部外科は外科系と内科系の両方をカバーしており、専門性は大きく耳科、鼻科、喉頭科、頭頸部外科の4領域に分かれています。対象とする疾患の範囲や手技の種類が広いだけに、難聴、がんなど、関連病院はそれぞれが強みとする分野をもっています。

 各病院が得意としていることは何か、伸ばす必要がある部分はどこか、情報を相互に共有。関連病院間のつながりを強め、各施設におけるすべての領域の「臨床力の底上げ」を図っているところです。

 例えば耳の手術の実績が豊富な施設を見学したり、テーマ別に集まって勉強会を開催したりして、各専門領域の最前線にいる医師たちの技術や知識を吸収する機会を設けています。地域医療の充実に貢献するのはもちろん、若い医師たちは、どの病院でも高いレベルで診療経験を積むことができます。

 プロジェクトの成果の一つとして、多施設の臨床データを用いた頭頸部がんに関する英文論文も多数発表。前向き研究にも着手できればと考えています。

 一方で、新しい医療の創出も大学病院の使命です。京都大学では組織工学的手法を用いて人工気管を開発し、医師主導治験を実施しました。世界初の製品化を目指しています。また、日本気管食道科学会、日本頭頸部癌学会、国際音声外科シンポジウムなどを開催し、国内外に情報を発信しています。

超高齢社会での役割は。

 難聴は認知症の進行と関わっており、リスク因子の一つであると言われています。早期の補聴器の着用で進行を遅らせることができるのではないかとも考えられていますが、長期にわたる検証が必要なこともあって、明確な比較は難しいのが現状です。

 認知症のスクリーニングテストとして国内外で広く活用されているMMSE(ミニメンタルステート検査)には、「質問が聞き取れなければ答えることが難しい」項目も含まれています。難聴者がテストを受けたケースの中には、認知機能が適切に評価されていない可能性があるものも含まれているのです。

 私たちは「聴覚に依存しない」新たな認知機能評価尺度を開発。タブレット端末などを使って目視で質問の内容を理解できるようにすることで、難聴者であるかどうかにかかわらず、安定して評価できる手法を確立しました。

 誤嚥(ごえん)性肺炎は、高齢者の死因の上位にあり、その適切な対策が求められています。嚥下障害に関しては、全国の病院にアンケート調査を実施しました。

 さらに、いつ、どの程度のリハビリテーションで介入するのがいいのか。また、数十種類もの多様な嚥下訓練法がある中で、感覚的に効果が高いとされてきた手技が、他と比較して実際にどれだけの改善に結びついているのか。これらを統計的に導き出す試みも進めています。

 難聴、嚥下障害、がん。これから医療ニーズが高まる超高齢社会のキーワードに対して、新しい医療を創造し、広く発信することができる。そして、世界レベルの臨床と研究を志す人材が集まった組織を、しっかりとマネジメントできる。そんな能力を兼ね備えた次世代のリーダーの育成が私の夢です。

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
京都市左京区聖護院川原町54
☎075―751―3111(代表)
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ent/

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