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東洋医学と西洋医学 融合の架け橋となる人材を

東洋医学と西洋医学 融合の架け橋となる人材を

 矢野 忠 学長(やの・ただし)
1970年東京教育大学(現:筑波大学)教育学部附属教員養成施設卒業。
明治国際医療大学大学院教授などを経て、2018年から現職。

 日本初の4年制鍼灸大学として誕生した明治国際医療大学。現在は鍼灸学部鍼灸学科、看護学部看護学科、保健医療学部救急救命学科、同柔道整復学科の3学部4学科を有する。
 矢野忠学長は、鍼灸を含む東洋医学と西洋医学との融合が、医療に関わる課題を解決するための糸口の一つになるのでは―と語る。

―大学設立までの経緯や背景を聞かせてください。

 鍼灸の歴史をさかのぼると、701年に制定された大宝律令の中の医療制度の法令「医疾令」や日本最古の医書とも言われる「医心方」の中で、鍼灸について触れられています。

 「医心方」を編さんしたのが当時の丹波国(現在の亀岡市、南丹市)に生まれた丹波康頼氏。当地にこの大学を開設したのも、丹波氏ゆかりの土地だったためです。

 1978年、鍼灸の研究と高等教育を目指して短期大学が開設されました。その後、1983年に伝統医療の近代化、科学化を進めようと4年制鍼灸大学を設立し、4年後には、附属病院も開設。医学部も歯学部もない大学に、附属病院が設置されるのは画期的なことでした。1991年には大学院も設置しています。

―附属病院があるメリットや大学の具体的な活動は。

 医療界は西洋医学が中心ですから、鍼灸など東洋医学についても西洋医学と共通の言語で語らなければならないと考えてきました。例えば「『気』が流れる」ではなく、エビデンスを示す必要があります。本学には附属病院がありますので、臨床現場との共同研究が可能です。鍼灸に関する臨床研究を積み重ね、学会の場や論文を通じて、エビデンスを持って効果などを説明してきました。

 例えば、MRIを使って鍼灸による刺激が、脳にどのような反応をもたらすか解明。心地良さを感じる時の脳機能を可視化し、論文で発表しました。また、基礎研究では、鍼灸によって脳内の神経伝達物質の一つ「セロトニン」が増加することが明らかになりました。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも言われ、精神を安定させる働きがあるとされています。

 そのほか、地元南丹市と連携協力包括協定を結び、健康に関する市民公開講座などを実施しています。今後は、健康経営の観点から企業と提携して社内に鍼灸院を開設し、その効果などを具体的に示す研究に取り組みたいとも考えています。西洋医学と東洋医学を連携させ、社会の課題解決の道筋を見いだす人材育成が私たちの役割だと思っています。

―鍼灸を取り巻く現状や今後の流れについて。

 東洋医学には「未病を治(ち)す」という言葉があり、病気にならないよう健康を維持しようという考え方が根底にあります。世界の動きを見ても先進国を中心に、少子高齢化、医療費の増大といった問題から予防医学への重要性が高まり、これに伴って鍼灸など伝統的な医療にも注目が集まっています。

 鍼灸についてはアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国で医療として根付いています。アメリカでは鍼灸師を大学院などで養成。伝統医学を重要視している韓国では「韓医師」、中国や台湾では「中医師」と呼び、国家資格として認めています。

 国内でも、2010年に西洋医学とそれ以外の伝統医学など、双方の長所を生かした新たな医療・医学を模索する「統合医療プロジェクトチーム」が設置され、議論が行われました。臨床現場で漢方薬が多用されるようになるなど、西洋医学以外への理解も広がりつつあります。国内は今、医療費の増大といった問題を抱えています。高齢化が進む中、健康寿命の延伸も大きなテーマです。課題解決のため、われわれもアプローチを続け、力を発揮したいと思っています。

明治国際医療大学
京都府南丹市日吉町
☎0771―72―1181(代表)
https://www.meiji-u.ac.jp/

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