九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

東京都立松沢病院 創立140周年

東京都立松沢病院  創立140周年

身体拘束の最小化「誇り」として受け継ぐ

 東京ドーム4個分の広大な土地にある東京都立松沢病院。歴史は1879年設立の東京府癲狂院(てんきょういん)にさかのぼる。今年、創立140周年、現在地に移転して100周年の節目。どのような役割を果たし、また何を目指すのか、齋藤正彦院長に聞いた。

─これまでの歩みを。

 東京への人口流入が加速していった明治時代。当院の前身である東京府癲狂院は、精神疾患のある人々を受け入れる施設として開設しました。差別が激しかった時代ですから、患者さんたちは、いわば置き去りの状態だったのです。

 1919年、5代目院長の呉秀三先生が「劣悪な環境で私宅監置されていた精神疾患の患者に、人間らしい暮らしと治療を」をスローガンに、ここ松沢の地で精神疾患の治療をスタートさせました。

 治療において不可欠なのは太陽の下で自然と触れ合うこと。そんな考えに基づいて選んだ立地は、豊かな自然の中でした。100年が経った現在も敷地内には木々や池、遊歩道などを整備しています。

 1988年にアルコール精神疾患専門病棟、1989年に老人性認知症専門病棟を開設するなど、時代のニーズに合わせた診療を常に目指してきました。

 病院ではなく地域で暮らしていく。薬物治療の進歩などもあって、そんな患者さんたちが増えています。退院した患者さんが安心して生活していくために、2015年、患者支援センターを開設。地域の方々、また地域のクリニックの先生と連携して患者さんと一緒に歩む。そんな病院でありたいと考えています。

─大きなポイントを挙げるとすれば。

 やはり身体拘束の最小化だと思います。呉先生が身体拘束を禁じたものの、現場では「急性期の患者さんの安全を守るため」という考え方が根強く、身体拘束は続いていました。

 私が院長に就任した2012年以降、看護部長らと共に「身体拘束ゼロ」を目指し、職員の意識を変えることに注力しました。

 2009年度に18.2%だった身体拘束実施率は2017年度には2.0%にまで低減しました。「身体拘束をしなくても患者さんの安全は守ることができる」ということが、少しずつ職員に根付いていった結果だと感じています。

 この変化は、地域の医療機関との関係性の強化にもつながりました。精神疾患への対応が難しい医療機関から、当院が患者さんを受け入れる。地域の役割分担が進む後押しとなっていると思います。「身体拘束をしない」ことを松沢病院の文化として、また職員の誇りとして受け継いでほしいと願っています。

─今後は。

 地域ぐるみの防災活動に取り組み始めたところです。災害時の精神疾患の患者さんへの対応などもお伝えしていきます。

 患者さんに手厚く、質の良い医療を提供していくために地域での連携をさらに進めていきます。例えば提携クリニックの先生が当院の非常勤医師となって患者さんを切れ目なくフォローするなどの仕組みも運用しています。地域の精神科医療の底上げに寄与していきたいと思います。


東京都世田谷区上北沢2─1─1
☎03─3303─7211(代表)
http://www.byouin.metro.tokyo.jp/matsuzawa/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる