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早期発見への意識を高め肝がん減少を後押ししたい

早期発見への意識を高め肝がん減少を後押ししたい

内科学講座消化器内科部門 鳥村  拓司 主任教授(とりむら・たくじ)
1982年久留米大学医学部卒業、同第二内科(現:消化器内科部門)入局。
久留米大学病院肝がんセンター長、久留米大学先端癌治療研究センター教授などを経て、
2014年から現職(久留米大学病院副院長を兼任)。

 がんの部位別の死亡数で「肝臓」は5番目(国立がん研究センター「2017年最新がん統計」)。県別で見ると佐賀県、福岡県が上位に入るなど、九州地域の肝がん患者の死亡数が多いことが知られている。減少傾向にあるが、新たな課題があることも事実。久留米大学病院腫瘍センター長も務めるなど、がん診療の第一線を知る鳥村拓司教授に現状を聞いた。

―近年の肝がんの傾向は。

 国内の肝がんによる死亡数は、2002年のおよそ3万5000人がピークとされ、その後、減少傾向に転じました。

 とはいえ、いまだ年間で3万人ほどが亡くなっている現状があります。今後のさらなる対策が望まれている疾患なのです。

 肝がんの主な要因はC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスの感染です。肝がんの患者さんには、肝臓に過剰に脂肪がたまった状態の「脂肪肝」や、長期にわたって肝炎ウイルスによる炎症を繰り返すことで引き起こされる「肝硬変」が多く見られます。

 C型肝炎患者については減少に向かっています。しかし近年、肝がんに占める割合として、C型でもB型でもない「非B非C型」の肝がんが増えている点が注目されています。要因としてアルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎などが挙げられます。

 肝がん患者を減らすためには、やはり早期発見を徹底することです。例えば日本には、150万人を超えるC型肝炎ウイルス陽性者がいるとも言われています。

 しかしながら、ウイルスに感染しても症状を感じないケースも多いのです。自分が感染していることに気づかないため、受診の機会を逃している場合が少なくありません。

 また、自身がC型肝炎患者だと認識していても、なかなか通院が続かないために治療が中断し、症状が進行してしまうという問題も指摘されています。

 患者の受診への意識を高めるだけでなく、医療者の意識も変える必要があると思います。検診での発見から専門の医師へとしっかりとつなげる仕組みを整えなければなりません。

―治療の選択肢は。

 腫瘍の大きさや進行の度合い、転移の有無などに合わせて、さまざまな方法を検討します。初期の段階では手術や焼灼療法で根治が期待できます。

 進行した腫瘍の治療に関しては、選択肢の一つに「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」があります。がん細胞に「栄養」を運んでいる動脈に対して、カテーテルで抗がん剤などを注入。血管をふさいで血流を少なくすることで、がん細胞を死滅させる方法です。

 TACEの後に、一定の割合で再発することがあります。TACEなどの効果が望めない場合は、次の選択肢として血管新生を阻害する分子標的薬の使用を検討します。

 血管をふさがずにカテーテルで抗がん剤を注入する「肝動注化学療法」などもあります。当教室では、難治性の肝がんに対するより高い治療効果を求めて「New FP」という治療法を実施しています。

 腫瘍をめがけて抗がん剤などを注入し、およそ5日間の薬剤の持続注入を数回くり返す治療法です。治療成績に関して、手応えを感じています。

―最後にメッセージをお願いします。

 私がセンター長を務める「久留米大学病院腫瘍センター」は、院内の各部署の連携を図るほか、がん相談支援センターの開設やがんサロンでの交流、地域のみなさんに向けたセミナーの開催などを担っています。また、早期の社会復帰を後押しするために就労支援などにも取り組んでいます。

 がんのこと、治療のことをもっと知りたいという市民の声も大きくなっています。今後も継続して早期発見の大切さを訴えていきたいと思っています。


久留米大学医学部 消化器内科部門
福岡県久留米市旭町67
☎0942―35―3311(代表)
http://www.kurume-shoukaki.jp/

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