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早期発見、治療につなぐ 乳房意識した生活を

早期発見、治療につなぐ  乳房意識した生活を

熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科分野
准教授(やまもと・ゆたか)

1991年宮崎医科大学(現:宮崎大学)医学部卒業。
米ロズウェルパークがん研究所留学、
熊本大学医学部附属病院高度医療開発センター乳癌(がん)分子標的治療学寄附講座特任准教授などを経て、
2015年から現職。

 国内の乳がん患者は増加し、罹患(りかん)者数は女性がかかるがんの中でトップとなっている。山本豊准教授は乳がん検診の重要性と共に、早期発見のために女性が実践すべき新しい生活習慣を訴えている。

―乳がん治療の動向は。

 2020年4月、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」の手術が一部保険適用されるようになりました。遺伝学的検査で変異が判明すれば、対側リスク低減乳房切除術やリスク低減卵巣卵管摘出術ができるようになったため、遺伝子診療チームや婦人科と連携して手術する体制を整えています。また、当大学病院はがんゲノム医療連携病院であり、遺伝子パネル検査を用いた難治がんに対する新しい治療法の開発も本格的に進めています。

 かつてがん医療は、全国どこでも標準的な医療を受けられることが目標とされていました。近年は、専門性の高い医療は集約化する方向に進みつつあると思います。集学的な治療が必要な場合は専門的なスタッフがそろった拠点病院で行い、その時期が過ぎたら地域の中核病院や開業医の先生に患者さんを戻すという流れです。チーム医療というと病院内のこととイメージされがちですが、地域全体でチームを構築し、患者さんを診るという考え方です。

―早期発見に重要なことは。

 検診は、公的に行われる対策型検診と人間ドックなどの任意型検診の二つがあります。乳がんの対策型は40歳以上の女性を対象に2年に1度のマンモグラフィーを実施していますが、AYA世代といわれる思春期・若年成人の乳がん患者は、数は少ないものの早期発見が難しいのが現状です。

 そこで、最近注目を集めているのが「ブレスト・アウェアネス」という概念です。これは自分の乳房の状態に関心を持ち、乳房を意識して生活する習慣を身につけることによって、乳がんの早期発見・診断・治療につなげていくという考え方です。具体的には、①日頃から自分の乳房を見て、触って、感じる②しこりや乳頭分泌など乳房の変化に気をつける③変化を感じたらすぐに医療機関に相談する④40歳になったら定期的に検診を受ける―の4項目を実践することです。

 乳がんの5~10%は遺伝性とされていて、家系に乳がん患者がいれば発症リスクは高くなります。特に自分の母親や祖母に乳がん患者がいた場合は25歳くらいからこの基本行動を意識し、30歳を過ぎたら人間ドックなどで検診を受けることを勧めています。

 国内で乳がんが増えているのは主に食生活や生活習慣の変化が原因と考えられていますが、日常的な生活習慣を変えるのは難しいものです。誰もが乳がんになるリスクがあると考えて、日頃から自分の乳房に関心を持ち、早期発見につなげていくことが大切です。

―今後の乳腺医療と求められる人材について。

 医療の進歩は日進月歩で、日々研究を重ねることで新しい診断法や治療法を開発していく必要があります。検査方法も現在はマンモグラフィーと超音波(エコー)が一般的ですが、従来の考え方にこだわらない柔軟な発想が求められています。グローバル化が進み、さまざまな医療分野で国際的な標準化が進んでいますが、日本には独自の風土や環境があり、日本人に合った医療があると思います。

 例えば、乳がん患者の肥満指数の比較では、欧米人女性に比べて日本を含むアジア人女性との間には有意な差があり、痩せている方がリスクは低くなるという研究結果があります。日本ならではのエビデンスを生み出し、新しい治療法を発信していかなければ、日本の乳がん治療の進歩、発展はありません。地域医療においても乳腺専門医のニーズは非常に高く、乳腺医療の未来を担う人材の育成にさらに力を入れていきたいと考えています。

熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科分野
熊本市中央区本荘1―1―1
☎096―344―2111(代表)
https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/breast/

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