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早期対応、メンタルケア 患者と職員守り抜く

早期対応、メンタルケア  患者と職員守り抜く


総院長(おおた・かつやす)

1976年大阪市立大学医学部卒業。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校メディカルセンター、
大阪市立大学医学部第一内科医局長、浅香山病院内科部長などを経て、2012年から現職。

 精神病床792床と一般病床223床(計1015床)を擁する浅香山病院。日本感染症学会の指導医でもある太田勝康総院長は、新型コロナウイルス感染症にどのように対峙(たいじ)してきたのか。これまでの取り組みを聞いた。

―感染拡大直後から対策を講じてきました。

 当院の病床の8割近くを占めるのが精神病床です。感染者が1人でも出てしまうと、病棟の性質上、一気に感染が拡大してしまう恐れがある。当初から強い危機感を持っていました。

 2020年1月末に対策会議を開催し、約1200人の職員に「少しでも体調に異変があれば病院の門をくぐらない」を徹底。外来をゾーニングして病棟と完全分離しつつ、4月に特設外来のテントを設け、患者さんはもちろん職員にも受診するよう周知しました。

 5月に抗原検査を開始し、8月初旬には特設外来をプレハブ4棟に拡充すると共に、一度に90人近くの検査ができるPCRの装置を導入。とにかくウイルスを外から持ち込まないよう腐心しました。職員2人、患者さん1人と、散発的に感染者が出ましたが、すぐに該当部署と病棟の全員にPCR検査をして陰性を確認し、クラスターの発生を抑えました。

 同年4月から感染患者の受け入れを始め、5月から5床を運用しています。軽症、中等症が対象で、約60人を受け入れてきました。重症化した場合は専門病院に送っていますが、満床状態が続いてこの先も油断できません。経営面では、コロナ対応のために通常の病床を減らさなくてはならず、収入減に頭を抱えていましたが、空床補償で何とか大きな赤字にはならずに済んでいます。

―患者や職員のメンタルケアについては。

 基本的に患者さんへの面会は認知症病棟を含めて禁止しています。会いたいと訴える患者さんにどう対応すべきか、今も悩んでいます。精神科の入院患者さんが帰宅するのは容易なことではなく、信頼関係のもとで職員が十分に患者さんを観察し、細やかにケアすることで対応しています。

 職員に対するメンタルケアも師長を中心に目配りしています。臨床心理士が相談に応じる心理室を設けており、不安や心配事があればすぐに利用できます。個人情報は厳密に管理されて表に出ないので、安心してサポートが受けられます。

 特にコロナ病棟の看護師たちは根気よく頑張ってくれていますが、心配なのはこの先。緊張の糸が切れた時です。「どんな状況であっても、患者さんだけでなく自分も守るという姿勢を大切にしよう」という思いは伝え続けていきます。

―見えてきた課題や、今後の見通しは。

 当初は一部、コロナ診療に対する抵抗感もあったようですが、スピード感を持って早期に動いたことは結果的に職員の安心につながったと感じています。早ければ早いほど、弊害や不安を最小限に抑えることができます。当院は日本感染症学会認定の研修施設で、私自身も指導医です。感染症看護専門看護師も活躍してくれていて、感染症対策の知識と理解のある職員が十分にいたことが推進力になりました。

 国内全体では、感染症の専門医は1600人程度しかいません。全国各地の病院でクラスターが多発したのも、専門医がおらず対策が遅れたのが原因の一つだったのではないかと考えています。感染症看護専門看護師だけでなく、司令塔としてのドクターの役割も重要だと思っています。

 今回、感染症の恐ろしさを改めて思い知らされました。また新たな感染症がいつどこで発生するか分かりません。これを契機に、行政には対策を強化してほしいですし、何より感染症対策の専門医を目指す医師が一人でも増えてほしい。それが切実な願いです。

公益財団法人 浅香山病院
大阪府堺市堺区今池町3─3─16
☎072─229─4882(代表)
http://asakayama.or.jp/

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