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早期、高負荷リハビリが リハビリの未来を変える

早期、高負荷リハビリが リハビリの未来を変える

和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学講座
田島 文博 教授(たじま・ふみひろ)

1984年産業医科大学医学部卒業。
米ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部リハビリテーション医学教室、
浜松医科大学医学部附属病院リハビリテーション部助教授などを経て、2003年から現職。

 リハビリテーション医学は疾病や外傷で低下した身体的、精神的機能を回復、克服するという従来の理念に加えて「人間の活動を育む」という考え方を重要視する。田島文博教授は全身の状態を診ながら、高い負荷をかけたリハビリテーション医療を早期に実施することで、新たな可能性を探る。

―改めてリハビリテーション医学の考え方とは。

 久保俊一先生が理事長を務める「日本リハビリテーション医学会」では、2018年春に初めてリハビリテーション科医のコアテキストを作成しました。

 これまで、リハビリテーション医学は疾病や外傷で低下した身体的、精神的機能を回復、克服することがその柱でした。テキストでも明記していますが、従来のこの理念に加えて、「人間の活動を育む」という考え方を重視するようになりました。

 このような変化の背景には高齢社会の進行があります。私たちは高齢になっても「一生涯元気で過ごしていきたい」という思いを強く持っています。しかし、その「元気」とは何でしょう。重要なのは「活動」、人それぞれの生きがいに目を向け、その人が活動できるように治療しなければいけません。

 スポーツ、カラオケ、旅行などニーズは違いますが、それを実施できるよう身体的、精神的な活動を支える医療が私たちリハビリテーション科医の役割です。
 つまり、患者さんの究極の目的は病気や障害を克服、改善して元通りの活動をしたいというもの。元気でいるためには決して寝たきりにさせてはなりません。そこで全身の状態をしっかり診ながら、リハビリテーション医療を取り入れていく必要があるのです。

―講座で実施するリハビリテーション医療の特徴は。

 基本コンセプトは、人間を活性化するということでしょう。そのためには早期、そして負荷の高い運動療法が大切です。

 それを目で見て理解していただこうと、私たちが実践する治療を講座のホームページで動画を見ることができるようにしています。

 例えば、脳血管疾患の患者さん。どんな痛み刺激を与えても目を覚ましません。しかし、私たちはこのような患者さんを安静臥床(がしょう)させません。

 超急性期から椅子に座り、そして立つことで、患者さんには自立の意識が出てくるのです。しかも、ここでやめることなく、歩行訓練に取り組みます。言い方を代えれば、患者さんは寝ている時間がない。しかし、昼間の訓練が高い負荷のため、せん妄もありませんし、ICUにいる時間も大変短い。まひがあっても装具を装着して訓練を実施します。座位、起立、運動負荷は意識状態を改善する治療法として大変有効なのです。

 私たちの研究では、発症後24時間以内にこのような訓練を始めると、在宅への復帰率は8割を超えます。しかし、それ以降に訓練を始めると復帰率は6割台に落ちてしまいます。
 ただ、それにはリハビリテーション科医の全身管理が極めて重要です。患者さんの全身状態の安全性を担保しなければ、療法士も徹底した訓練を実施できません。

 また、当院ではがん患者さんの場合は、がんと診断されたときから、われわれが関与します。もちろん術後の訓練もありますが、外科手術などに向けて事前に筋力、心肺能力など体力を上げておくのです。これをすることで回復の度合いはまったく違ってきます。

 近年、高齢の患者も増加しています。しかし高齢であっても、リハビリテーション科医が全身を診ながら高負荷な運動療法を取り入れることはできます。当院の訓練は、決して楽なものではありません。しかし、退院後の患者さんの肉体的な負担は減ります。機能回復だけではなく、人間の活動を育む積極的なリハビリテーション医療の実践が、これからは求められると信じています。

和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学講座
和歌山市紀三井寺811―1
☎073―447―2300(代表)
http://wakayama-med-reha.com/

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