日本慢性期医療協会 会長 武久 洋三

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 2020年という、キリのいい年がやってくる。ここ数年医療界では不思議なことが次々と現実のものとなってきている。

 2010年の65歳以上高齢者は2924万人であったのが、2025年には3677万人、2045年には3920万人となることが予想されている。人間は生まれてきたら必ず死ぬ。死亡する前には何らかの医療や介護のサービスを受けることが多い。したがって、高齢者が増えれば増えるほど医療費がどんどん増えるということは言われ続けている。しかし現実には医療介護需要が急増し、医療介護費用が多大になると予想されていたが、2018年の総医療費は42兆円台で、横ばいか微増に落ち着いている。しかも外来患者数は、2011年は726万人だったが、2017年は719万人、入院患者数は、2011年は134万人だったが、2017年は131万人とかえって減少している。すなわち高齢者の増加に対して反比例しているのである。さらに最近の診療報酬介護報酬は、ほとんど上がらないか、むしろ下がっていることが多い。

 元来病院は病気を治療する場所である。しかしながら日本では、平均在院日数はまだ30日近くあり、アメリカの5倍も長いが、今後急速に世界的標準に近づいていくであろう。急性期病床における長期入院を可能にしていた特定除外制度もようやく是正されてきたところである。療養病床は「療養」という名前が治療する場所というよりはまさに字のごとく、結核療養所のように長い間治療より養生するというイメージが強く、いまだに年余にわたって入院ができる制度となっているが、療養病棟入院料1は医療区分2・3患者80%以上という厳しい重症基準をクリアしないと継続できなくなった。療養病棟入院料1は、慢性期治療病棟のみしか認めないという強い意思表示であり、きちんと治療できない療養病床は、病院病床でなくするという強いメッセージである。すでに一部の高度急性期病床の平均在院日数は10日を切ろうとしている。治療を終えているにもかかわらず、ずるずると入院し続けることができた日本の医療制度は過去のものとなろうとしている。

 今、8300ある病院が10年以内には間違いなく6000台まで減少し、20万床近い病床が消えてなくなろうとしている。

 私は人口減少して過疎となった地域の病院の病床を削減せざるを得なくなることに対して、減床政策として補助金が必要であると主張してきたが、対応してくれそうである。  各都道府県の医療基金はかなりの余裕がある。その範囲内で対応は可能である。政府は2040年までの医療対策はすでに大略の道筋をつけることができたと思っているに違いない。

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