九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

日本医師会 会長 横倉 義武

日本医師会 会長 横倉  義武

 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、令和初の新年を健やかにお迎えになられたこととお喜び申し上げます。

 平成の時代を振り返りますと、われわれは戦争のない平和な時代を過ごすことができたことに感謝する一方で、阪神・淡路大震災や東日本大震災、2016年熊本地震などの大地震、さらには豪雨や超大型台風などの自然災害が相次ぎ、多くの国民が被災されたことを忘れるわけにはまいりません。

 犠牲になられた方々のためにも、平成の教訓を令和の時代に生かすべく、日本医師会では、被災地に派遣する日本医師会災害医療チーム(JMAT)を立ち上げ、随時その機能強化を図りながら、「被災者健康支援連絡協議会」参加団体等の関係機関との連携強化に取り組んでまいりました。

 さらに、これからの災害対策には、行政、介護、福祉などの幅広い「多職種連携」が必要になります。加えて、地域包括ケア、医療・介護連携を中心としたまちづくりと地域社会のつながりがその礎となるものと考えます。今後も、医師会組織の緊密な連携に向けた施策を強化しながら、引き続きこれらの取り組みの推進に、全力を尽くしてまいります。

社会変化、技術革新に合わせ医療も適切な変容を


 新たな時代に引き継がれたわが国の大きな特色に、人類史上かつてない超高齢社会の到来があります。人口の減少や過疎地域の拡大、所得や生活環境の格差など、複雑な環境変化が絡み合い、社会全体が模索を続ける中で、医療も適切な変容を遂げていかなければなりません。

 政府は「人生100年時代」に向けて全世代型社会保障への改革を進め、子どもからお年寄りまで、切れ目のない社会保障の構築を目指しておりますが、そのためには、現在の医療を分かりやすく国民に示し、納得の得られる給付と負担に関する国民的合意へと導いていく必要があります。

 依然として日本人の死亡原因のトップを占めているがんですが、2006年に「がん対策基本法」が成立し、同法に基づく基本計画が策定、数次にわたり見直され、全国どこでも質の高いがん医療を提供できるよう、がん診療連携拠点病院の整備や多職種連携等が進められてきました。

 これにより、がんに関わる1人当たりの医療費は、特に後期高齢者において2000年当時よりも低下しており、対策法の制定による適切な整備の重要性が明らかになりました。

 また、65歳以降の傷病別り患数を見てみますと、がんよりも脳血管疾患や高血圧性疾患、心疾患といった循環器系疾患が多くなっております。この対策として、2018年末には「成育基本法」とともに、「脳卒中・循環器病対策基本法」も成立しました。本法の目的は、循環器病の予防推進や迅速かつ適切な治療体制の整備を進めることで、健康寿命の延伸と医療・介護の負担軽減を目指すことにあります。

 現在、介護保険で要介護5と認定される要因の30%は脳卒中後遺症と言われています。脳卒中は発症から4時間以内に抗凝固療法を行えば、後遺症の発症を軽減することができますので、早期に対応できる連携システムを整えることができれば、後遺症による長期療養者を減少させることも可能となります。基本計画の策定に向けて、これから具体的に動き出しますが、全国各地で推進していく必要があると思っております。

 われわれ医師は従来、診断・治療に重点を置いてきましたが、今後は予防・教育や再発重症化予防、見守り、看取りにおいても重要な役割を果たしていかなければなりません。そうした意味で、各地域で地域医療に従事する「かかりつけ医」は、学校医や産業医としての役割を果たすだけではなく、ICTやAI、再生医療、ゲノム医療など、医学における技術革新にも対応していかなければならず、日本医師会といたしましては、引き続き「かかりつけ医機能研修制度」の一層の充実を図るとともに、かかりつけ医のさらなる普及・定着に努めてまいりたいと思います。

日本の経験をもとに国際貢献に取り組む

 さて、私は2019年10月、ジョージアで開催された世界医師会(WMA)トビリシ総会において、世界医師会長を退任し、3年間にわたるWMAでの会長職を無事終えることができました。その任期を全うできましたのも、皆さま方の温かいご理解と力強い支えによるものであり、厚く御礼申し上げます。

 在任中は、日本の優れた医療システムを世界に発信し、世界中の人々の健康水準向上に寄与すべく、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進に努め、WHOとの覚書の締結、「Health Professional Meeting 2019」の開催、国連総会NCDs、UHCに関するハイレベル会合、G20岡山保健大臣会合への出席等、WMAを代表した活動を行ってまいりました。

 また、地域医療のあり方としての、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムや疾病対策、健康増進、高齢社会への取り組みについて紹介したほか、トビリシ総会では、長年議論されてきた安楽死の問題が取り上げられ、WMAとして安楽死に反対する意思を明確に表明した修正案が採択されました。

 さらに、同年11月にはワーク・ライフ・バランスをテーマに国際会議を開催し、医師の燃え尽き症候群やWell-beingなどが各国共有の課題として認識されました。ここで得られた知見が、今後の働き方改革の議論に資することが期待されます。WMA会長としての役割は終えましたが、これからも日本の経験を通じた医療の国際貢献に取り組んでまいりたいと考えております。

医療界がスクラム組んでオリ・パラの成功を目指す

 昨年9月には、ラグビーワールドカップ2019がわが国で初めて開催され、日本列島が熱狂と感動の渦に包み込まれました。「ONE TEAM」という、この競技の熱いコンセプトが、多くの国民の心をわしづかみにしたことに、ラグビー経験者の一人として、万感胸に迫る思いをいたしております。

 開催期間中、日本医師会では開催地の医師会との連携の下、訪日外国人を含む200万人を超えるファンがスタジアムを埋めることによる万が一の事態に備え、CBRNEテロを含むマスギャザリング対策等に取り組むなど、万全の体制を整えて参りました。幸い大きな問題はなく、大会を終えることができました。ご協力いただきました多くの方々に感謝申し上げます。

 そして、今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、東京都医師会を始め開催地の多くの先生方を中心に、医療界がスクラムを組んで、大会の成功に貢献してまいる所存でおりますので、引き続きのご支援・ご協力のほど、お願い申し上げます。

 令和の時代も医師としての高い倫理観と使命感を礎に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指してまいりますことをお伝えし、年頭のごあいさつとさせていただきます。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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