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新型コロナとインフルエンザ 同時流行に備える

新型コロナとインフルエンザ 同時流行に備える

 年明けから続く新型コロナ(新型コロナウイルス感染症、COVID―19)の感染拡大下、季節性インフルエンザの流行期を迎えた。並走期に懸念される同時流行に備え、厚生労働省の呼びかけで、10月1日からリスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人などを優先して、インフルエンザワクチンの接種が始まった。発熱して似た症状の患者を迎えるかも知れない「かかりつけ医」をはじめ医療現場は、院内感染、医療崩壊を恐れ、戸惑いの中で警戒を強めている。

インフルワクチン解禁 かかりつけ医接種に殺到

インフルエンザワクチン接種開始で、かかりつけ医に訪れた高齢者
(福岡市中央区赤坂の松嶋内科クリニックで)

 千葉市稲毛区小仲台、医療法人社団以仁会「稲毛サティクリニック」は10月に入り、様相が一変した。2日は診察104人・ワクチン接種162人・同時施行28人で、計238人が受診した。ワクチン接種が解禁になったばかり。河内文雄理事長(呼吸器内科)は「ワクチンは、早々に無くなってしまうのではないか。本当に接種が必要な方々がワクチン難民にならないか」と懸念する。

冬場に向けて診察室拡充 コロナで新たな費用が

 奈良県天理市、社会医療法人高清会高井病院でも10月からインフルエンザのワクチン接種を始めた。谷田宗久事務長は「発熱の患者さんが来院された場合、ほとんどがインフルエンザだと思いますが、新型コロナの可能性もある。二つの疾患を同時検査するしかないのではないでしょうか」と語る。同院は地域の中核病院。発熱外来は設けていないが、救急患者を受け入れており発熱した患者の受診もある。9月末までに救急と一般外来で7人の陽性患者が出た。

 今夏は感染対策として屋外テントで診療したが、今は1階の救急科診察室で対応する。しかし、インフルエンザの患者増加を見据え、プレハブ診察室建設の検討を始めた。「患者さんもそうですが、医師や看護師など職員が真冬にテントで対応するのは難しい」

 プレハブ費用は感染を防ぐ陰圧室機能を持たせれば、数千万円に上る。病院の出入り口4カ所にサーマル(体表面温度測定)カメラを設置しているが、新たな投資が不可欠だと考えている。

インフルエンザに備え体制整備が求められる

 9月28日現在、1739人の感染が確認されている京都府。松井道宣・府医師会長は「今季は新型コロナを考慮しなければならない。発熱した患者さんは必ず、受診前に電話で相談し、来院時のマスク着用、受診指定時間、手指消毒を徹底してほしい。発熱以外の患者さんも来院時は体温測定と健康調査を実施する」と、協力を訴えている。

 府医師会では、インフルエンザの迅速検査は鼻腔検体、コロナウイルスのPCR検査は唾液検体で行うことを推奨している。鼻咽頭ぬぐい液を採取する従来法に比べて感染リスクは格段に低くなるという。防御具は府と契約をしている医療機関には厚労省から供給される。府と府医師会では唾液検体を使用するPCR検査について集合契約を結んだ。参加医療機関は400を超え、即応できる。府から委託を受けてPCR検査センターも運営しており、10月末を目標に5カ所に増やす方針だ。府医師会は相談・受診医療機関は「患者が集中すると院内感染のリスクが増す」として公表しない。

コロナ後の地域医療は高齢化進む地方の不安

 「インフルやコロナを乗り越えることも大事だが、2年後、3年後の地域医療体制が心配」と、高井病院の谷田事務長は医療経営に不安を感じている。

 緊急事態宣言後、高齢者の受診控えは医療機関に打撃を与えた。同院の4月、5月の患者数は前年比で18%程度落ち込んだ。谷田事務長は「コロナ後の地域医療には、政治のかじ取りが大事だ」と戸惑いを隠せない。

厚労省が10月中をめどに流行期に備えた整備を通達

 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は9月4日、「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」を各都道府県に事務連絡した。発熱の患者に対する相談・診療・検査の体制を、かかりつけ医などを中心に10月中をめどに整備するよう求めた。

 感染が疑われる人の相談・受診の流れを変える。これまで保健所の相談窓口(帰国者・接触者相談センター)が受け付け、専門外来を紹介してきたが、今後はかかりつけ医が相談を受け付け、インフルエンザと新型コロナ対応の前線に出る。専門外来は重症者治療に専念する。

 厚労省は今季、過去5年で最大となる約6300万人分のインフルエンザワクチンを供給する予定。


《コロナ・インフルエンザ並走期》医療現場、国民に警戒呼びかけ

 並走か、同時流行か─。新型コロナ(新型コロナウイルス感染症、COVID―19)感染下で最大の難関、季節性インフルエンザの流行期がやってくる。当初は新型コロナ第2波の時期とも目されていたが、年明け以降の感染拡大は収束することなく、息つく間もなく冬季感染症のシーズンを迎えた。、学会、医師会、専門家らは医療現場、国民に警戒を呼びかけている。

日本感染症学会が臨床現場に提言

 (舘田一博理事長)は今秋を前に「今冬のインフルエンザとCOVID—19に備えて」という提言を出した。

 「従来のコロナウイルスの伝播(でんぱ)モデルから今冬に新型コロナの大きな流行が起こることが予測されている。特にインフルエンザの流行期と重なることにより、重大な事態が危惧(きぐ)される」として、—COVID—19アドホック(限定目的の)委員会を組織し、一般のクリニックや病院での外来診療を対象に提言している。

 「同時流行が起こるかどうかは今年夏季の南半球の流行状況に注目する必要がある。新型コロナとインフルエンザの合併も報告されている」として、双方の臨床上の相違を発表した(表)。

 新型コロナでは「無症状感染者が高頻度に存在し、無症状であっても気道のウイルス量は多く、発症直前に最大量となり感染性が強くなる」。このため、「症状から感染者を診断、隔離することは困難」と警告している。一方、インフルエンザは「発症1日前から気道にウイルスが存在するが、ウイルス量が少なく感染力は弱い。発症2日目になると、ウイルス量は増加し、迅速診断も陽性化する。原則として発熱を指標に診断、患者隔離が可能」と違いを指摘している。

 しかし、外来診療の場では「確定患者と明らかな接触があった場合や、特徴的な症状(インフルエンザの突然の高熱発症、新型コロナの味覚障害、嗅覚障害)がない場合、臨床症状のみでの鑑別は困難」として、新型コロナ患者に遭遇する蓋然(がいぜん)性が高い地域では両方の可能性を考える必要があると注意を呼びかけている。

少なかった他の感染症 適切な対策実施で成果?

 9月26日、熊本大学オンライン公開講座「新型コロナウイルス研究の最前線〜治療薬からワクチンまで〜」が開かれた。ここでも同時流行が話題になった。 

 厚生労働省の福島靖正・医務技監は「人とのコミュニケーションを限定しないで感染防止をどうしていくか。迅速診断キッドで秋冬の同時流行、1日に数十万人がインフルエンザの検査を受けるピーク時に備える」とした。

 東京大学医科学研究所の河岡義裕教授は「(わが国は)2月以降、感染症対策をちゃんとやってきたので、(2019年度冬季は)インフルエンザの流行が少ない。(マスク着用、手指消毒、3密回避などの新型コロナ対策が)全ての感染症に対して有効であった。他の感染症も増えていない」として、対策の有効性を挙げた。その上で「ところで、小中学、高校で流行すると高齢者に行く。その感染対応策をどうするか」と今後の課題も指摘した。

会話での飛沫感染を防ぐユニバーサルマスクは重要

 9月8日、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医師が臨床現場9カ月の知見をもとにオンラインで講演した。その中で新型コロナとインフルエンザを比較した。

 講演では、新型コロナの臨床症状について「潜伏期間は平均5日、発症から受診まで約5日かかる。発症後1週間程度は風邪やインフルエンザのような症状が続き、入院する場合は10日程度の時間がかかる。重症化するまでに1週間〜10日程度注意深く診ていく必要がある」と、経過観察の必要性を指摘している。

 「感染性のピークが発症前と言われる。蛍光塗料で唾液などの飛沫を光らせて見てみるとわかる。おしゃべりをするだけで飛沫が飛んでいる。症状がない人も会話で感染を広げる可能性がある。だが、マスクをすると飛沫は飛ばなくなることも実験で判明している。症状がなくともマスクをつけることには大変意義がある」と、感染防止にマスクを推奨。ユニバーサルマスク(無症状の人も含めてマスクを着用する)の重要性を指摘した。

 同時流行については「発熱、せき、咽頭痛、関節痛、筋肉痛と症状が共通している。どちらも飛沫で感染し、潜伏期も近い」として、「インフルエンザのワクチンを受けている人はそうでない人と比較してコロナの重症化リスクが減ったという報告もあるようだ。いずれにしろ、ワクチンの接種率を高めたほうがいい」と勧めた。

 今冬のインフルエンザワクチン接種は多くの感染症専門医が勧めている。

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