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新たな治療法を考え続け 患者の幸福に貢献する

新たな治療法を考え続け 患者の幸福に貢献する

長崎大学病院 
山口 直之 准教授(やまぐち・なおゆき)
1998年長崎大学医学部卒業。
千住病院、長崎医療センター、井上病院などを経て、2018年から現職。

 日本における消化管ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をリードする長崎大学病院の山口直之准教授。内視鏡治療への注目が集まる中、治療と、さまざまな課題を解決するための臨床研究にも真摯に取り組む。

―消化管ESDにおける実績と経緯を。

 消化管の中の食道のESDにおいては、治癒率はもちろん、いかに治療後の狭窄を予防するかも大変重要です。そのため、われわれはこれまでさまざまな手法を考案し、用いてきました。

 その一つにステロイドの経口投与があります。従来の治療では、ステロイドは局注療法のみで、技術的にも高度なものが求められました。術後1㍉程度しか残っていない内膜に、穿孔をつくることなくステロイドを注入するには、かなりの精度が必要で、その技術を有する人は限られていました。

 より安全にステロイドを投与できる方法はないか、と考えて、スタートしたのが経口投与です。この方法は、現在では食道がん診療ガイドラインに「強く推奨する」療法として掲載されています。さらに、局注療法をより安全に施行するための局注針も開発しました。現在、「内視鏡用穿刺針Nタイプ」という名前で広く用いられています。

―消化管ESDにおける今後の見通しは。

 2013年から、東京女子医大とタイアップした新たな治療に取り組んできました。早期食道がんに対するESD後、潰瘍面に再生医療を応用した細胞シートを移植する手法を導入しています。局注、経口療法のどちらにも抵抗性のある患者さんに有効かも知れないと考えたからです。

 この療法の優れた点は、ステロイドを使った2パターンの狭窄予防法に比べ、治癒に要する期間が1カ月ほど短くて済むこと。そうは言っても、再生医療自体、始まったばかりの医療ですので、まだまだこれから研究していく必要があります。

 今後、65歳以上の高齢者の割合は、さらに高まります。2015年には500万人ほどだった抗血栓薬服用者が2030年にはおよそ2500万人と、5倍に膨れ上がるという推計もされているほどです。

 当然、がんや心筋梗塞、脳梗塞といった病気の好発年齢とも重なってきますので、私たちとしても、早めに対処していかないといけない。2012年以前のガイドラインでは抗血栓薬を休薬したうえで、食道がんの治療をすることが勧められてきました。

 しかし、各科でいろいろ検討された結果、この種の薬をやめるほうが脳梗塞などの発症リスクが高まり、より命の危険が増すということで、休薬なしでの治療をすることになりました。そこで私たちとしては、増加しうる出血量に対処するため、「PGAフェルト+フィブリン糊被覆法」を採用し、治療しています。

 ただ、いずれの治療も、今のところ一長一短で、パーフェクトな方法ではありません。1980年代にEMRが誕生し、1990年代にはESD(内視鏡的粘膜切除術)が登場、世界を席巻したように、新たな治療法が誕生するのを期待したいですね。

―臨床と研究を両立されてきた先生が考えるワーク・ライフ・バランスとは。

 スタッフみんなが高い医療知識と技術を身につけることが特に大切ではないかと思います。全員が同程度の知識と技量を有していれば、誰かが不在であっても、その分を他のメンバーでカバーすることが可能になるのではないでしょうか。

 私としては、医療とは、まず地域に貢献することだと考えています。長崎の人の病気を治療し、幸せにしたいという思いを出発点に、さらには論文を書いて発表し、国内やひいては外国にいる同じ病気に苦しむ人たちの幸せに寄与できればうれしいですね。

長崎大学病院光学医療診療部(消化器内科)
長崎市坂本1―7―1
☎095―819―7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/gastro/

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