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新たな治療法に挑戦 耳鼻咽喉科の魅力を学生へ

新たな治療法に挑戦 耳鼻咽喉科の魅力を学生へ

  耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 倉富  勇一郎 教授(くらとみ・ゆういちろう)
1982年九州大学医学部卒業。九州大学医学部耳鼻咽喉科、九州がんセンター、
佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座准教授を経て、2014年から現職。

 佐賀県の頭頸部がん患者の9割以上を診療しているという佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座。倉富勇一郎教授に佐賀大学での特徴的な治療法や耳鼻咽喉科の新専門医制度の現状について話を聞いた。

―増えている病例は。

 私の専門分野である頭頸部がんの中では、中咽頭がんや下咽頭がんが増加しています。もとはタバコやお酒が主な原因だと言われ、年齢層は60~70代が中心でしたが、若い人の発症例も増えているのです。

 特に中咽頭がんは、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)感染による増加が著しい。これは子宮頸がんを引き起こすウイルスでもあり、世界には、子宮頸がんの予防に使われるHPVワクチンを女性だけではなく男性にも接種して、中咽頭がんの一次予防を進めている国もあります。

―佐賀大学での特徴的な治療法は。

 放射線治療の前に実施する導入化学療法として、これまでの抗がん剤に分子標的薬をプラスする治療の臨床試験を始めました。

 抗がん剤のみの治療よりも副作用が少ないこの治療が効けば喉頭がんや下咽頭がんの病状が進行した人でも喉の機能を残すことができるメリットがあります。効果があると証明できれば、まずは九州内で広めて、それから全国へと浸透させられたらいいと思います。ただ、結果が出るのに5年はかかるでしょう。

 もう一つの特徴としては早期がんの経口的切除の増加。特にのどの早期がんで、発声など喉頭の機能を保存する経口的切除での手術例が増えています。放射線治療ではなく、内視鏡や専用の金属の管を口から入れてのどの内側からがんを切り取ります。全国的にも放射線治療から経口的な手術に変わってきています。

 われわれの関連施設で手術ができる耳鼻咽喉科があるのは、県内で佐賀県医療センター好生館(佐賀市)、織田病院(鹿島市)、小栁記念病院(佐賀市)。われわれは頭頸部がん治療が中心です。県内のがん診療の砦(とりで)として、佐賀県内の頭頸部がん患者の9割以上を診ています。

 他の三つの病院は主に良性疾患の手術を手がけています。中でも織田病院には耳の手術のスペシャリストがいるので、耳を専門的に治療しています。所属する医師の専門によって役割分担がきちんとできているので、病院同士の連携がうまくいっているのだと思います。

―耳鼻咽喉科の新専門医制度の現状を。

 今年度、新専門医制度で耳鼻咽喉科を選んだ専攻医は佐賀県内で2人です。昨年度も2人だったので、現在、県内に合計4人。他の科と比べると少ないのではないかと思われがちですが、このまま継続的に2人ずつ確保できるのなら、県内の医師の人数としてはちょうどいいと考えています。

 私が5年前に教授に就任したとき、このままでは将来マンパワーが足りなくなると思い、人材確保を意識しました。例えば、多くの医局員が参加できるように医局での懇親食事会を増やして、学生に医局員を近くに感じてもらう。学生にとっては医局の雰囲気がわかり、自分の将来像が見えます。「こんな医師になりたい」と思ってもらえるように、医局員と学生とのコミュニケーションを促したんです。それからは毎年2人ずつ志望してくれるようになりました。

 耳鼻咽喉科はさまざまな病状に携われる科だと思います。範囲は首から上の脳と眼以外であり、内科的診療から手術まで幅広く手がける。まだそのイメージが学生に広まっていないと思うのです。全国的に耳鼻咽喉科医の人数を増やすためには、学生のイメージを変えること。耳鼻咽喉科でできることはたくさんあるのだと、もっと知ってもらえたらと思います。


佐賀大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
佐賀市鍋島5―1―1
☎0952―31―6511(代表)
http://www.ent.med.saga-u.ac.jp/

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