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新しい医療の在り方とは

新しい医療の在り方とは

裾野赤十字病院 芦川 和広 院長 (あしかわ・かずひろ)
1990年聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院、
米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院などを経て、
2009年裾野赤十字病院入職。2019年から現職。

 「むやみに病気を恐れず、受け入れ、医療だけに頼るだけでなく生活から見直す。そんな視点が今後、より大事になるのでは」と語る芦川和広院長。目の前の患者の話を聞き、共感し、不安を取り除く「生きることの質や幸福を考えた医療を」と願う、その意味は。

背負った期待に背かず

 生まれも育ちも東京・世田谷。外科医で救急医療に従事していた父親の背中を追うように、医師を目指す。「よくあるケースですね」。大学時代に熱中したのはスカッシュ。現在もプロ選手とプレーする。「これがマイナースポーツのいいところ」

 卒業後は大学病院へ。関連病院で経験を積み、救命救急センターでも多くを学んだ。博士課程修了後、がん研究で世界をリードする米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターへ。転写因子NF―κBに関連する制がん作用について研究した。

 「とにかく厳しいラボでした。必死に研究に打ち込み論文に頭を悩ませました」

 大学の附属病院に戻った後、教育関連施設である裾野赤十字病院で勤務することになった。「実は父親は静岡県沼津市出身で、母親の実家も旧富士川町(現:富士市)の開業医。この地には、縁があったんでしょうね」

ー地域医療に貢献したい

 総ベッド数104床。小規模ながら地域の基幹病院として、揺るぎない存在感を示す裾野赤十字病院。

 「この地域では、急性期に対応し、入院できるのはうちだけ。医師不足で厳しい状況ですが、なんとか維持するしかない」

 救急搬送は年間400~500件。心疾患や脳疾患など重篤なケースは高次医療機関へ送らざるを得ないが、受け入れられにくい高齢者に対してはできるだけ診る、というスタンスを守る。

 さらに、高齢者が増えてきた現状を踏まえ、急性期医療から、高齢者に向けた医療へと、今後は軸足を変えていく。それに伴い、この6月に地域包括ケア病床を30床から45床に増床。昨年は、在宅医療介護連携支援センターを4月に、訪問看護ステーションを9月に開設した。

 「少子高齢化による独居、老老介護、金銭的困窮や自立困難、目の前の問題は山積しています。できるだけご自宅で過ごし、悪化したら病院で受け入れる。昔ならそこまで病院がやることか、と言われていたことも抱えていく覚悟です」

 疾患を中心とした医療から、生きることの質を考えた医療にシフトしなければと、決意は固い。

ー患者への接し方で医療は変わる

 「当たり前のことを、当たり前にしよう」。院長になり、そう職員に伝えた。心のケアも含めて治療ということを、職員で共有することを目標に掲げている。

 「患者さんに語りかけ、歩み寄っていく。声に耳を傾け、要望に応えていくことが医療なのだと思います。自分自身にも、常に言い聞かせていることです」

 しかし一方で、病気に対する考え方そのものを変えなければならないと、警鐘を鳴らす。長年がんの予防的治療の研究に携わってきたからこそ、その限界を感じずにいられない。

 「多くの方は病気を特別なものとしてとらえていると思います。しかし超高齢社会を迎え、いまやさまざまな疾患が身近な存在となりました。例えば併存疾患がある高齢者の服薬の問題なども指摘されています。今後は医療を受けるだけでなく、自分の生活習慣を見直す意識も高めていく必要があると思います」

 1日3回薬を飲むよりも、1日3回の食事を大切する。これからの日本の医療には、そのような考え方が必要だと訴える。

 「より良い医療、社会に向けて、私たちにどのようなことができるのか。考えていきたいですね」

裾野赤十字病院
静岡県裾野市佐野713 ☎055-992-0008(代表)
http://www.susono-jrc.jp/

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