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救急医に必要なのは広い視野と笑顔だと思う

救急医に必要なのは広い視野と笑顔だと思う

  医歯薬保健学研究  救急集中治療医学 志馬  伸朗 教授(しめ・のぶあき)
1988年徳島大学医学部卒業。京都府立医科大学麻酔科学教室入局。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員、京都府立医科大学附属病院、
国立病院機構京都医療センター救命救急センターなどを経て、2015年から現職。

 中四国にある高度救命救急センターは、7施設。広島大学救急集中治療医学はその一つとして、地域の「最重症救急患者」を受け入れている。2015年から講座を率いるのは、国内の集中治療医学分野の第一線にいる志馬伸朗教授。この数年間でさまざまな仕組みを整えてきた。

―主な活動は。

 この「救急集中治療医学」は大学院の医歯薬保健学研究科という教育・研究機関であると同時に、同大の「・集中治療部」を担う救急科という診療部でもあります。

 広島県内の救命救急センターは6カ所。当施設は県で唯一の高度救命救急センターです。主な特徴は、敗血症やECMO(体外式膜型人工肺)、そして小児の重症患者の受け入れに力を入れている点です。

 政令指定都市でありながら、広島市には「こども病院」がありません。私は京都府立医科大学附属病院で小児疾患に携わっていましたので、その経験を生かし、小児の重症患者を診療するシステムづくりに取り組みました。

 患者さんは県内全域から来院。他の医療機関の重症患者さんの搬送も積極的に受け入れています。

 広島県は北海道に次いで2番目に「無医地区」が多い県。数多くの島しょ部が存在し、県北部の備北、芸北と呼ばれる地域には救急科の専門医が常駐している医療機関がありません。

 その解決策の一つが、30分以内にドクターヘリで広島全域に救急集中治療を提供するシステムです。

 当院は広島県ドクターヘリの基地病院として、出動件数は年間約400件。「中国地方5県ドクターヘリ広域連携協定」(鳥取・島根・岡山・広島・山口)を締結し、県境をまたいでヘリを相互乗り入れすることで、迅速な救急集中治療の提供体制を構築しています。

 連携施設である東広島医療センター(東広島市)にドクターヘリシステムを使って医師を派遣する、いわば「出張ER」の仕組みも展開しています。

―専門は敗血症ですね。

 敗血症は、感染症による過剰な生体反応を要因とする致死的臓器不全。非常に病態の範囲が広い「シンドローム」です。重症であるほど、いろんな臓器が一度に機能不全に陥り、臓器専門性を問わない診療を必要とします。

 救急科で受け入れる患者さんのうち、敗血症が疑われるケースはかなりの数に上ります。しかし、敗血症の概念の普及はまだまだ十分とは言えません。

 そこで、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本感染症学会が協力して日本における敗血症アライアンスを形成し、「敗血症ドットコム」(http://敗血症.com/)というウェブサイトをオープン。継続的に敗血症の知識の普及に努めています。

 私個人の活動としても、さまざまな研修会や勉強会を開いて啓発活動を続けています。医療従事者だけでなく、一般の方々にも、もっと敗血症のことを知っていただきたいと思います。

―勤務環境や人材育成は。

 23人の常勤医のうち、7人が女性です。小さなお子さんがいる医師もいます。

 当院では「チーム主治医制」を採用しており、日勤と夜勤を明確に区別する交代制で患者さんを診療しています。働いた後にはしっかりと休息を確保し、家庭のこともおろそかにならない。そんな勤務が可能な体制です。

 救急集中治療は「総合重症診療」。つまり「何でも屋」の役割です。一つの臓器や専門性にとらわれない、ジェネラルなマインドと広い視野が大切です。また、他の診療科との連携も求められますので、コミュニケーション力も欠かせません。

 「人間のすべてを診る」ことに喜びを感じられる。どんなに緊迫した場面であっても平常心を保ち、笑顔を忘れずに診療できる。そんな救急医を育てていきたいと思います。


広島大学大学院  医歯薬保健学研究科  救急集中治療医学
広島市南区霞1─2─3
☎082─257─5555 (代表)
https://home.hiroshima-u.ac.jp/kyukyu/

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