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救急・災害医療を支える 新病院が開院

救急・災害医療を支える 新病院が開院

 今年5月6日、旧病院から北へ約1㌔㍍、イオンモール高知東側に移転した高知赤十字病院が開院した。新病院は「南海トラフ巨大地震」を想定した災害拠点病院としての機能を強化。有事の砦(とりで)として市民の期待も高まっている。

◎免震構造を採用

 水害に備え防潮板も 旧病院では建物の老朽化と職員の増加、そして災害時に想定される長期浸水による病院機能停止の問題が以前から懸念されていた。

 新築移転計画が大きく動いたのは2011年、東日本大震災発生後のことだ。宮城県石巻市は津波による甚大な被害を受けた。石巻赤十字病院は震災の5年前に沿岸から離れた場所へ移転しており、大きな被災を免れたという。

 東日本大震災で現地入りした救護班員たちの「このままではいけない」との熱い思いから、すぐさまプロジェクトチームが始動。計画は着々と進められた。

 2016年には本社理事会が移転計画を承認。通常よりも短い期間で承認に至ったことからも、この移転計画がいかに重要なものとして認識されていたかが分かる。

 移転先は地盤沈下による浸水の可能性が低い地区とされているが、水害に備え敷地に50㌢の盛土を施し地盤の底上げを図った。10カ所ある1階出入口には防潮板を設置。万一の浸水にも対応する。

 電力は異なる変電所から2系統で受電し、浸水対策として、屋上に非常用発電機を2台設置。非常用発電機稼働用のオイルタンクは地下に2基を埋設し、2重化を図った。

 100%負荷で4日分、60%負荷で7日分の電力が確保されている。また、地下に2基のピットを設置。1基は下水道遮断時に排水貯留槽として、もう1基は雨水を貯留し、トイレの排水などに活用される。

 さらに井水を浄化し、飲料水として利用できるなど、インフラ遮断時の対策も一段と強化された。

◎考え抜いた動線 無駄のない空間設計

 1階に救急(ER)外来、3階に手術室とICU、救急病床、そして屋上にはヘリポートを整備し、それら3カ所を直結する専用エレベーターを導入。CT、MRI、内視鏡室を救急外来周辺に配置することで救急患者を迅速に診断、治療できる動線とした。診療の効率化を図る狙いだ。

 4階のオープンスペースは、平時は職員が休憩や昼食を取るなどアメニティスペースとして利用。大規模災害時には、隣接するホールに災害対策本部が設置されることになる。オープンスペースとホールを合わせて医療チーム100~150人が収容可能となり、救護班、DMATの活動拠点ともなる。

 1階救急外来前のピロティ空間はトリアージスペースとなる。傷病者の治療スペースへ迅速に移行できるよう、こちらも動線を重視した設計だ。

 多数の傷病者に対応するため、外来エリアの待合ソファは処置用ベッドとしても使用できる災害用ソファベッドを導入。一般病棟は120床の増床が可能で、災害時に多くの患者を受け入れる体制が整った。

◎県内初の女性専用フロア 患者に寄り添う医療を

 建物の5階から8階までの一般病棟のうち、産科病棟を含む5階は高知県内で初の女性専用フロアとなっている。

左:5階はパウダールームなどを備えた「女性専用フロア」 右:浜口伸正院長

 病棟は優しいカラーで統一され、パウダールームもある。すべての病室で電子表札を採用し、第三者に名前が知られないようプライバシーへの配慮がなされている。さらに共用部分の通路の床は、足音が響かないように吸音性の高いタイルカーペットを敷いた。安心して入院生活を送るための細やかな気遣いが随所に見られる。

 「今後も地域の中核病院として〝救う・守る・つながる〟医療を実践します」。災害救急医療の要として、新病院は市民の拠り所となるだろう。

高知赤十字病院
高知市秦南町1―4―63―11 ☎088―822―1201(代表)
http://kochi-med.jrc.or.jp/

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