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支え合う暮らしで本当の「自律」をつかむ

支え合う暮らしで本当の「自律」をつかむ


柴田 元 理事長・院長

1977年久留米大学医学部卒業、同第3内科(現:心臓・血管内科)入局。
門司市民病院(現:北九州市立門司病院)、国立循環器病研究センター、
久留米大学医学部第3内科助手などを経て、1996年から現職。

 国土交通省による「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」を活用したまちづくりに挑む。採択は医療法人としては初。事業の一環として、医療・介護・福祉の複合施設「Hygge(ヒュッゲ)やまもと」が誕生した。柴田元理事長・院長は「地域で助け合うという発想が出発点」と語った。

―「病院を中心としたまちづくり」のきっかけは。

 リハビリテーションと言っても、その手法や質は千差万別です。「本当のリハビリテーションを提供したい」と思ったことが活動の出発点です。

 2000年に介護保険制度が始まり、在院日数の短縮化や在宅復帰率の向上に目が向けられるようになるなど、医療を取り巻く状況は大きく変化しました。その中で、患者自身が希望する形での在宅復帰がかなわないケースも増えました。

 家族と離れて一人で暮らしている、あるいは高齢の夫婦だけの世帯の割合が大きくなっている。こうした要因があると考えられます。そこで「助け合いながら暮らすことができないだろうか」と、いわば地域の原点を見つめ直しました。

―「ヒュッゲ」はデンマークの言葉で「居心地の良い」などの意味ですね。

デンマークの人々の生活に根付いている「ヒュッゲ」という思想から学んだことがベースとなっています。それが、地域の交流を深める新たなまちづくりの中心となる「Hygge(ヒュッゲ)やまもと」につながったのです。

 背景の一つは、もともと当院の1室を、リフトを設置してトイレや浴室への移動を支援する「ワンルーム・リフトケア」の訓練用の部屋としていたことです。この環境を活用して、例えば65歳未満の方なら100%近い在宅復帰率を維持していました。

 ただ、院内にこうした環境が整っていると「医療者に頼らずに在宅復帰を目指す」という意識を強く持つことは難しいでしょう。そこで、施設はシェアハウスのような共同住宅のスタイルを採用。入居者が助け合って地域に帰ることを目指すのがベストではないかと考えたのです。

 ご夫婦が一緒に入居できる部屋も用意しています。病院に併設していますので、何かあったときには、私たちがすぐに駆けつけることができます。スマートフォンによる通話、テレビやエアコンの操作、車いすでの移動、入浴やトイレ。これらの日常の動作に対する自信を高めてもらい、その後の在宅復帰は住宅改修なども含めてフォローします。

 地域コミュニティーの活性化を目的にしたカフェも開設しました。どなたでも利用できますから、社会に適応して「真の自律」を後押しするトレーニングの場ともなるでしょう。

 また、敷地内の別の一画には、就労継続支援B型事業所、元気向上通所サービス事業所、および地域活動を行う交流スペースを整備しました。障害がある方や高齢者が農作業などに従事し、少しでも収入を得られたらと思っています。その隣には従業員だけでなく、一般の方も利用できる託児所をオープンしました。

―今後のイメージは。

 医療法人が「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」を活用したプロジェクトに取り組むのは初めてのケースです。

 各所との調整に時間を要する部分はあったものの、地域の方々や、大学医学部、工学部の先生方など協力者が徐々に増えていきました。建設中、地域の皆さんからは「いつ完成するの?」といった期待の声もいただくことができました。

 今後、地域の空き家を利用してシングルマザーを支援する住居や、障害者を対象としたログハウスなどをつくりたいですね。将来的には、クリーンなエネルギーで生活が成り立つ。そんな町へと発展していけたらいいですね。

医療法人かぶとやま会
久留米リハビリテーション病院
福岡県久留米市山本町豊田1887
☎0942―43―8033(代表)
https://www.kurume-reha.or.jp/

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