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技術革新で延ばす健康寿命 2025年の「運動器」を守る!

技術革新で延ばす健康寿命 2025年の「運動器」を守る!

 「」への対応が急がれる中、健康寿命の延伸を目指す動きがさらに活発化している。介護予防のキーワードの一つが「運動器」。人工関節置換術の件数が増加傾向にあると言われる中、運動機能の維持に貢献する新たな技術への期待も高まっている。

再生医療や素材の工夫 続々と生まれるアイデア

 「2025年問題」でなぜ「75歳」が注目されるのか。その理由はデータが示している。

 65歳から74歳の要支援認定は1・4%(24万6000人)、要介護認定は2・9%(51万人)。75歳以上になると要支援認定が9・0%(147万人)、要介護認定が23・5%(384万2000人)と割合が跳ね上がる(データは2015年現在)。

 「要介護者等の介護が必要になった主な原因」を見ると、「骨折・転倒」(12・5%)が占める割合が大きくなっている。リウマチなどの「関節疾患」(10・2%)と合わせて、改めて運動器の障害が介護の予防と深く関わっていることが浮き彫りとなった。

 現在、運動器を守るためにさまざまな技術革新が進んでいる。

 例えば先進医療では、東海大学が変形性膝関節症の軟骨欠損の治療法として「自己軟骨細胞シートによる軟骨再生治療」に取り組んでいる。患者から採取した軟骨組織、滑膜組織で軟骨細胞シートを作製。軟骨欠損部の治療に用いる。

 また、大阪大学は半月板の損傷に対する「コラーゲン半月板補填材を用いた半月板修復療法」を実施している。現状、重度の半月板損傷の治療は切除が有効だが、中長期的に変形性関節症を発症しやすい。そこでコラーゲンの補てん材で半月板を修復し、機能の温存を目指している。

 「骨ネジ」で骨折治療に挑むのが島根大学だ。金属製のネジは固定力にすぐれるが、突出して健常の軟骨面を傷つけることがある。また、生体吸収ピンは強度が十分でなかったり、吸収時に異物反応を起こしたりすることがある。

 手術中に患者から採取した骨をスクリューに加工。「骨ネジ」なら拒絶や異物反応の危険性がなく、金属製のネジと同等の初期の強度があるとされる。

進むロボット技術の活用 早期の社会復帰を後押し

 近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)は国内で初めて人工膝関節手術支援ロボット「」()を導入。4月、同大整形外科学の赤木將男主任教授が中心となって1例目の手術が実施された。

 ナビオは主に変形性膝関節症、関節リウマチ、スポーツ外傷の後遺症などの人工関節置換術で活用される。ポイントの一つは、「高精度・低侵襲」の手術による早期の回復、社会復帰の実現だ。

 搭載された赤外線カメラが、術中に膝の軟部組織や関節、じん帯などの動きを評価。これらの情報に基づき、どのように骨を削ってインプラントを設置するのが最適なのか、いわば患者に合わせた「オーダーメード」の手術を計画することが可能だ。

 骨を削るドリルバーの回転や停止は、ロボットが高速でナビゲーション制御する。術者は画面を確認しながらドリルバーの先端を掘削する部位に当てて手術を進めていく。

 誤差は幅1ミリ、角度1度以下に抑えられるという。適切な評価に基づく膝十字靱帯の温存や高精度のインプラント設置によって、患者がもともとの膝のフィーリングと動きを取り戻せる可能性が高まる。術後のスポーツ活動への参加などが促進され、健康寿命の延伸につながることが期待される。

 欧米では、手術支援ロボットを使用した人工膝関節手術が積極的に行われている。赤木主任教授によると「米国におけるナビオによる手術は年間で1万5000例にも上る」という。

 現在、国内で実施されている人工膝関節置換術は年間約8万5000例。手術支援ロボットへのニーズはさらに高まっていくと見られる。赤木主任教授は「週に1度のペースでの実施を目指す。また大学の医学部の役割として、ロボット支援下手術に対応できる次世代の人材を育てることが重要」と語った。

 果たして次のブレイクスルーは―。関心は高まるばかりだ。

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