地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立広島市民病院
荒木 康之 病院長(あらき・やすゆき)
1980年岡山大学医学部卒業。
国立病院四国がんセンター(現:国立病院機構四国がんセンター)、
岡山大学医学部附属病院(現:岡山大学病院)第一内科、広島市民病院副院長などを経て、
2012年から現職。
広島市中心部に位置し、地域の高度急性期、急性期の医療を支える広島市立広島市民病院。2018年度の手術件数が、開院後初めて1万件を突破した。地域がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター、災害拠点病院。多くの役割を担いながら、存在感を高め続ける。
―手術件数が1万件を突破しました。
1万76件の手術を実施。目標としていた1万件を超えることができました。ハイブリッド手術室を含む手術室の増設、次の手術までのインターバルの短縮など、病院全体で取り組んだ成果だと思います。
2019年11月、新たな試みを始めました。産科 センター内の手術室でも緊急帝王切開手術の受け入れを実施するようにしたのです。
それまでは16室ある手術室のうち1室を緊急帝王切開の発生に備えて空け、15室を使用していました。麻酔科の医師数の関係もあって産科 センター内の手術室では通常分娩だけを受け入れていたのです。麻酔科医を増員できたこともあり、まずは平日の日勤の時間帯だけで運用しています。
16室すべてをフル稼働させられるようになったこともあり、2019年度は1万200件を目標に掲げています。もちろん、手術件数だけが当院の目指す指標ではありません。地域医療構想の中で高度急性期と急性期の医療を担う病院として、手術を多く手掛けることは大事な役割だと認識しています。
ハイリスク分娩を多く受け入れている総合周産期母子医療センターとして、産科で緊急帝王切開ができるようになったことは、医療サービスの向上にもつながっています。
―近年の動きは。
2015年に認定を受け、広島県内で4番目のTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)実施施設としてスタート。2018年度は72件を実施しました。通算件数は県内上位だと思います。
循環器内科や心臓血管外科だけでなく、麻酔科医や臨床工学技師、看護師たちを含めたチーム医療の最たるものと言えます。当院の強みである「総合力」を表す治療法でしょう。
TAVIは体力的に開胸手術が難しい高齢の大動脈弁狭窄症の患者さんも、根治を目指せる治療法です。手術の翌日か翌々日には食事を取ることができ、早期の社会復帰が期待できます。治療ニーズはさらに高まると思います。
また、「口唇口蓋裂センター」と「ブレストケアセンター」を開設しました。
先天的に上唇が割れるなどする口唇口蓋裂。当院の形成外科での手術件数が全国の上位に入るほど多いという背景があります。その強みをよりはっきりと打ち出す狙いです。
出産前から学童期、青年期まで長期にわたり、さまざまな治療が必要になることも多い疾患です。総合周産期母子医療センターや歯科口腔外科、耳鼻咽喉科のほか、言語聴覚士や地域の矯正歯科などと緊密に連携。子どもの成長を支えていきます。
ブレストケアセンターも乳腺外科や形成外科などのチームで患者中心の医療を目指して、乳がんの診断・治療、乳房再建などに取り組んでいます。
―広島でも近年相次ぐ自然災害。有事の医療にどう備えますか。
2014年の広島土砂災害、2018年の西日本豪雨では、発生直後の災害派遣医療チーム(DMAT)の活動を中心に、避難所の巡回などで中長期の医療支援にも関わりました。
毎年、全国的にも大災害が続いています。医療スタッフは災害をより身近に感じ、危機意識も高めています。多数の傷病者が運び込まれた際のトリアージや、病院そのものが被災した場合の入院患者の移動など、病院を挙げて年に数回、訓練を実施しています。取り組みを重ねて、実践的な対応力を高めていきたいと思います。

地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立広島市民病院
広島市中区基町7─33
☎082─221─2291(代表)
http://www.city-hosp.naka.hiroshima.jp/