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慢性腎臓病の早期発見で重大疾患リスクを抑制

慢性腎臓病の早期発見で重大疾患リスクを抑制

福岡歯科大学総合医学講座内科学分野 徳本 正憲 准教授(とくもと・まさのり)
1992年九州大学医学部卒業。福岡赤十字病院腎臓内科、九州大学大学院病態機能内科学
米ワシントン大学腎臓病学講座留学などを経て、2011年から現職。

 近年増加傾向にある慢性腎臓病(CKD)。進行すると末期腎不全に至るだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる病気の発症リスクを高める。腎臓病学のエキスパートとして、多くの腎疾患患者を診てきた徳本正憲准教授に、早期発見につながるポイントを聞いた。

―CKD患者の傾向は。

 福岡歯科大学医科歯科総合病院では一般内科として、腎疾患に限らず、さまざまな疾患がある患者さんを診療しています。多いのは、糖尿病や高血圧の患者さんですが、これらの生活習慣病に関連して腎機能が悪化するケースが見られます。

 また、動脈硬化も腎臓病の原因ですので、高齢になり動脈硬化を起こし、CKDへ移行する場合も少なくありません。一般的には、高齢になるほど発症しやすく、男性に多いと報告されています。

 CKD患者は、全国で約1330万人と推計され、成人人口の8人に1人が CKDと言われています。

 腎臓病は、動脈硬化や高血圧、貧血などと相互に影響しながら悪化していきます。いくつもの疾患を一度に治療し始めると、薬の副作用があった場合などに的が絞りにくく、治療が難しくなります。早期発見できれば、この問題を軽減することができます。

―早期発見のポイントは。

 腎臓の働きを調べる検査が必要です。一般的には、採血検査によって、尿素窒素やクレアチニン値が正常範囲を超えることで、初めて腎臓の異常に気付くことが多いと思いますが、実はその段階ではすでにステージが進行している場合が少なくありません。

 CKDを判断する他の指標として、腎臓の機能を表すGFRがあります。腎臓がどのくらい働いているかが推測できるため、注視して治療を行っています。

 現在は、多くの血液検査の結果に、血清クレアチニン値と年齢、性別から概算する「eGFR値」が記されていますので、腎臓がどのくらい働いているかの目安になると思います。

 また、腎機能が低下していなくても、尿たんぱくの量が多いほど、将来的に腎臓の働きが悪くなることが明らかになっています。このような患者さんに対しては、月に一度、尿たんぱくの量を確認する尿検査が重要で、結果に従って尿たんぱくの量を減少させるように治療を行い、腎機能悪化の予防に努めています。

―今後の展望を。

 腎臓を専門としてから、慢性腎不全に関連した「骨ミネラル代謝異常」「血管石灰化」に関する研究を続けてきました。腎臓の働きが悪くなるとミネラルのバランスが崩れ、血管石灰化を起こし、心臓血管病など死に至る病気の発症リスクが高くなります。

 リンの蓄積が原因ですが、腎臓病でなくても、高齢や糖尿病の方も血管石灰化が起きやすく、老化や鉄分、マグネシウム不足が関係することも明らかになってきました。今後それ以外の要因も探っていきたいと思います。

 CKD患者の腎臓専門医への紹介基準に関しては、ガイドラインが示されています。しかし、急に腎臓の働きが悪くなり、原因がよく分からない、また少しでも進行を抑えたいなどの場合は、ステージにかかわらず、ご相談いただければ、しっかりと対応します。

 CKDが進行して、末期腎不全に至り、透析を行っている方は全国で33万人超。腎移植も、日本ではまだ少ないのが現状です。むくみや夜間頻尿などの自覚症状は、腎臓の働きが半分以下になるまで現れません。気付いた時には、治療法が透析しかないほど症状が進行している場合もあります。

 何よりも早期発見が、病気の進行を食い止める最善の方法です。一度悪化すると、元に戻すのが難しい病気ですが、早期に異常を発見して手を打てば、進行を抑制することは十分可能なのです。

福岡歯科大学 総合医学講座内科学分野
福岡市早良区田村2―15―1
☎092―801―0411(代表)
https://www.fdcnet.ac.jp/col/department_graduate_school/div_info/div_info_shindan_sogo_m

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