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感覚を「診る」のは人間にしかできない

感覚を「診る」のは人間にしかできない

熊本大学大学院生命科学研究部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
折田 頼尚 教授(おりた・よりひさ)
1996年岡山大学医学部卒業。米ピッツバーグ大学客員研究員、
癌研究会附属有明病院(現:がん研究会有明病院)、
岡山大学医学部附属病院(現:岡山大学病院)などを経て、2017年から現職

 2017年6月に着任後、これまで熊本大学耳鼻科ではあまり盛んではなかったがん研究に力を入れている。もうすぐ就任3年目がスタートする折田頼尚教授に話を聞いた。

―どんな2年間でしたか。

 日々の研究や手術などと向き合い、まさにあっという間でした。岡山県から熊本県に移り住み、ようやくこの土地に慣れてきたというのが実感です。

 着任して以降の2年で新たな入局者を9人迎えました。現在、メンバーが20人を超え、まだまだ体制を整えなければなりませんが、入局者が増加傾向にあることを嬉しく感じています。

 私が新たな研究テーマとして取り入れた頭頸部がんの領域については、今年初めて文部科学省の科研費を獲得し、研究を推進できる体制になってきました。熊本大学ではこれまでに頭頸部がんの研究実績がなかったため、申請書を書くのに苦心しました。ようやく資金や研究員の配置が整い、いよいよ研究の第一歩を踏み出すことができました。

 育成面では研究と臨床のバランスが重要だと考えています。若い人材を研究に導くとともに、臨床の現場でもしっかりと経験を積んでもらうことが大切です。熊本県の状況としては、医局員を派遣する医療機関の数や、若手を育てる医師の数がまだまだ不足しています。

 当面は大学が中心となり人材を育てていくことが必要です。近い将来、専門医や各病院で指導する側に立てる人材を増やすべく、まずは医局員一人一人が「どんな医師になりたいのか」ということに耳を傾けるようにしています。

 医局には研究者になりたい者もいれば、臨床でプロフェッショナルを目指す者もいます。なるべく本人の意向に沿いながら、適性を判断してアドバイスすることを心がけています。医局の人数が増え、高いレベルの若手が育てば、いずれは天草や阿蘇といった耳鼻科医が不足している地域の医療もカバーすることができます。各病院に勤務する医局員によって、連携を強化することもできるでしょう。

 私たちは、鼻や耳だけでなく鎖骨から上、脳から下の範囲をすべて診る科です。境界領域は他科の先生と連携を取りつつ、専門性が求められる部分はしっかりと担っていく。このチームワークが熊本全域で当たり前に構築されることが理想だと考え、日々若い医局員たちと向き合っています。


―今後の展望を。

 本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞されて一躍有名になった、がんの免疫療法やがんを取り巻く微小環境の研究を進めたいと考えています。

 頭頸部がんは飲酒や喫煙などが要因。全領域のがん患者の数からすると比較的まれながんです。重症化すると顔面が変形したり、飲食が困難になったり、場合によっては治療の際に声を犠牲にせざるを得ない場合もあります。

 かなり進行したケースでは、大きな外科手術が必要となることもあります。放射線治療や抗がん剤で根治可能か、積極的に手術をすべきか。その見極めが大切です。負担をより軽減できる免疫療法の研究が進めば、いつか大きな手術をせずとも治せる日がやってくるでしょう。

 画像検査や血液検査といったデータ解析に、今後AIが次々と導入されることが予測されます。それでも耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、人間の診断が不可欠な医療。なぜなら感覚器官はとてもデリケートだからです。

 耳鼻科領域の患者さんの訴えは、たとえ同じ疾患であっても個々の患者によって大きく異なります。それをAIで判断するのは難しいでしょう。人が人を診ることが必要な分野だからこそ、臨床と研究のバランスを大切にした医療を届けていきたいと思っています。


熊本大学大学院生命科学研究部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
熊本市中央区本荘1ー1ー1
☎096―344―2111(代表)
http://kumamoto-ent.com/

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