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感染症指定医療機関 3分の1が浸水リスク

野原大督
京都大学防災研究所助教

京大防災研究所が全国調査

 2020年のコロナ禍を受け、京都大学防災研究所附属水資源環境研究センターの野原大督助教は同年4月、全国の感染症指定医療機関372施設の浸水想定状況を調査し、その3分の1が大型の洪水によって浸水被害を受けると発表した。7月には豪雨災害を検証し、繰り返される自然災害、コロナウイルス感染拡大との複合災害発災に警鐘を鳴らす。野原助教に調査結果、浸水リスク、今後の医療機関の水害対策について聞いた。

―調査の背景について。

 感染症医療の中心を担うのが感染症指定医療機関だ。COVID―19の流行を踏まえると、洪水と感染症の複合災害の恐れがあると考えられる。近年、大規模水害が増加していることからも、感染症指定医療機関の浸水想定状況などを検証する必要があると考えた。

―調査方法は。

 国土交通省国土地理院のウェブサイト「重ねるハザードマップ」や自治体のハザードマップを利用して、全国372の感染症指定医療機関について洪水時の浸水想定状況を調査し、まとめた。

―調査結果については。

 想定される浸水の深さを四つのカテゴリーに分類して集計した。計画規模と想定最大規模の洪水浸水想定区域の2種類で算出した。

 計画規模洪水浸水想定区域は、概ね100年から200年に一度。一方、想定最大規模洪水浸水想定区域は、概ね1000年に一度の確率で発生する可能性がある洪水が起こった場合に浸水が想定される区域だ。

 それによると、計画規模(100年〜200年に一度)の洪水浸水想定区域の場合、25・5%の95施設に浸水が想定される。

 さらに、想定最大規模(1000年に一度)の洪水浸水想定区域の場合は、33・6%の125施設に浸水が想定される。加えて、4分の1の26・6%の99医療機関で最大2~3㍍の浸水が想定されていた。予想以上の多さで驚いている。感染症指定医療機関の浸水の危険性は決して小さくないと考えられる。


―想定最大の可能性は。

 洪水の被害軽減を目的とする「水防法」が2015年に改正された。その際に、従来の計画規模洪水の基準に加え、想定最大規模洪水まで拡充して公表することになった。

 近年の主要な洪水にあてはめると、2019年、福島県や長野県など東日本で被害が生じた台風19号は計画規模と同等であった。

 2018年、岡山県や愛媛県などに被害を及ぼした西日本豪雨は計画規模から想定最大規模の間だった。

 2017年の九州北部豪雨は想定最大規模相当の洪水だ。つまり、決して起こらない洪水とは言えない。将来的にも豪雨の規模は大きくなり、発生頻度も増えていくと言われている。

―7月の球磨川の氾濫は。

 現在、計算をしている途中だが、河川の流量から試算しても計画規模洪水と想定最大規模洪水の間だったのではないかとみている。感染症指定医療機関の人吉医療センターは若干浸水があったようだ。同センターは計画規模であれば浸水しないが、想定最大規模であれば大きく浸水すると想定されていたので整合性はある。

―結果からの課題は。

 COVID―19をはじめとした感染症と大規模洪水の複合災害が起こりうることを意識しておく必要がある。このため、従来にない水害への特別な対応が必要だろう。

 これから台風期を迎える。医療機関や、自治体の厚生・保健部局は感染症対策への対応に追われていると思うので、防災・治水の対応部局が側面支援に備えてほしい。

―感染症指定医療機関など医療機関ができることは。

 まず、医療機関自身が水害のリスクを知っておくことが第一歩だ。ハザードマップによる確認は有用だ。

 医療機関の水害対応計画が、浸水リスクに見合ったものになっているか、感染症への対応も踏まえたものになっているか、再度確認していただきたい。

 具体的には土のうや止水板による浸水防止策、非常用電源や感染症病床の上層階への設置、電気回路の防水化、避難先の事前確保などの対策が可能だ。

 一方で医療機関の方はあまり課題を抱え込まないでほしい。水害対策で不明点や課題があったら、防災情報に精通した河川管理者や行政の防災部局に相談し支援を求めることも大切だ。

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