九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

患者の心に思いをはせ 共に生きる医療を

患者の心に思いをはせ  共に生きる医療を


院長(やまぐち・ひろゆ
き)
1993年広島大学医学部卒業。
広島県厚生連吉田総合病院、国立病院機構賀茂精神医療センター精神科医長、
同副院長などを経て、2020年から現職。

 太平洋戦争中に海軍病院として開設された国立病院機構賀茂精神医療センター。現在は、精神科疾患と重症心身障害の専門医療機関としての役割を担う。山口博之院長は就任を機に、「患者と共に生きる医療」を提供する病院づくりへの思いを新たにする。

患者と同じ目線で

 池のほとりに茂る松林。飛び交う野鳥のさえずり。24㌶の閑静な敷地に、機能別の病棟が並ぶ。

 1944年に海軍病院として開院。戦後は厚生省(当時)へ移管され結核療養所に。1965年から順次、精神科や重症心身障害の病棟が整備された。「歴史ある病院。責任の重さを感じています」と、山口院長は語る。現在、精神科、心療内科、内科、リハビリテーション部門(精神)、歯科を掲げ、精神病床312床、重症心身障害病床100床を有する。

 精神科を専門とする山口院長。「患者と同じ方向を見る」ことの大切さを強調する。身体疾患と異なり、患者本人が「病気」との認識を持たないまま来院させられるケースが多いからだ。「的確な治療でも、すんなり受け入れられることは少ない。患者に寄り添い、胸の内に思いをはせなければ、『対立』が生まれやすいのです」

 例えば、認知症の人も「何も分かっていない」のではない。多くのことを感じ、考えている。その上でなぜ「問題行動」を取るのか。それを医療者側が想像できれば、言葉のかけ方も対処の仕方も変わってくる。「それってすごく労力がかかるし、難しいこと。だけど、『向いている方向はあなたと同じだよ』という関係を築ければ、治療の大きなハードルは越えたといえます」

労力いとわないケア スタッフに敬意

 看護師をはじめ、院内のメディカルスタッフの仕事ぶりに頭が下がるという。「患者に寄り添い、労力をいとわない姿勢が自然に身に付いていると感じます。何か具体的な取り決めを設けているわけではないのですが」。病院は「共生」の理念を掲げる。「その理念の中で引き継がれた看護力の結果かもしれません」

 自身も1999年、賀茂精神医療センターの前身である当時の国立療養所賀茂病院への赴任を皮切りに、この場で通算20年診療に当たってきた。「私もここで、『患者に寄り添い、同じ方向を見る』という考えを学ばせてもらいました」

気張らず拒まず新たな挑戦を

 高校3年生のとき、それまでの工学部志望をやめ、医学部を目指した。医学部6年時には、いくつかの候補から精神科医局を選択。どちらも「なんとなく、その時々にそんな気持ちが高まっただけ」と気張らない。

 精神科医長を務めていた2008年、医療観察法病棟が完成した。重大な他害行為をしたが、心神喪失などのために責任を問えない状態と判断された人への入院医療を提供し、社会復帰を促す専門病棟だ。

 国の指定を受けての新たな役割。法曹界と関わりながら手探りで取り組む中、新たな発見や勉強すべきことに次々と出くわす。「流れに身を委ね、目の前の仕事に全力を注ぐ。するといつも、その先に興味深いことが待っていた。そんな感じです」。自然体での歩みが、医師としての幅を広げた。

 「後進たちにも、楽しみながら仕事をしてほしい。その原点は、自分の仕事が誰かのためになっているという実感。そして新しいチャレンジが必要です」

 職場の改善でも、自身のスキルアップでもいい。自ら提案してほしいと、院長就任後にスタッフ全員に個人メールアドレスを伝えた。「働きがいを感じ、誇りを持てれば、おのずとケアの質は高まる。患者さんの利益につながる。その好循環をつくるのが使命です」。生き生きとした提案メールが届くのを心待ちにしている。

独立行政法人国立病院機構 賀茂精神医療センター
広島県東広島市黒瀬町南方92 ☎️0823-82-3000(代表)
https://kamo.hosp.go.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

Instagram did not return a 200.

コメントはこちらから

メニューを閉じる