九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

急激な過疎化地域の 急性期・高度医療

急激な過疎化地域の 急性期・高度医療


病院長(やべ・としかず)

1987年愛媛大学医学部卒業。
高知医科大学医学部老年病科(現:高知大学医学部老年病・循環器内科学)、
英ロンドン大学セントジョージ病院留学、高知県立幡多けんみん病院副院長などを経て、
2019年から現職。

故郷のために尽くす

 「定年まであと8年、幡多に尽くそうと思っています。いい病院にしていきたい。幡多医療圏で急性期・高度医療を担う病院はここしかありません。使命感をもって取り組みます」

 高知県四万十市出身。愛媛大学医学部から、地元である高知医科大学医学部老年病科(現:高知大学医学部老年病・循環器内科学)に入局した。

 まだ高齢化が注目されていない1987年ごろ、早くから高齢化が進むと予想されていた高知県にとって必要であると感じた。

 英国への留学や高知大学で講師なども経験しながら、幡多けんみん病院での勤務は、2001年から4年、そして2013年から現在までと計10年にもなる。循環器科部長、診療部長、副院長などを経て、2019年4月、病院長となった。

患者第一を実践する

 矢部氏が入局した高知大学医学部老年病・循環器内科学は、地域在住老年者の活動能力維持を目的とする縦断的フィールド医学的研究「香北町研究」をはじめ、日本の医療・介護制度に影響を与えた研究が数多い。その根底にあるのは、創設当時からの「ペイシェント・ファースト(患者第一)」だという。

 「私たちが行ってきたペイシェント・ファーストは、いかに自分の時間を患者さんに使えるか。手術や治療はもちろん、安全な治療のための準備や丁寧な説明、治療後の経過説明、退院後の相談など、手を抜くことはできません。働き方改革も考慮しながら、できる限り、患者さんに寄り添いたいと思います」

経営難の過疎地域「地域を一つの病院に」

 幡多医療圏は3市2町1村、人口約8万人の小医療圏だ。中山間地域を含む広い域内に病院や診療所が点在している。開業医とは、勉強会などを通じて顔が見える関係づくりを進めており、交流を深めながら地域医療を支えてきた。

 しかし、近年過疎化が著しく、毎年1500人規模での人口減少が続いている。高齢化率が上がり、医療ニーズも変化している。

 幡多けんみん病院も経営が難しくなっている。人口減に加えて高齢者が多く、合併症を含めた治療が必要となるため、短期の入院で治療が完結できなくなっているのだ。

 「それでもわれわれは救急・周産期・小児・高度医療を維持していかなくてはなりません」。解決策は「地域を一つの病院に」というコンセプトだ。急性期に特化して、回復期や療養は他の病院に任せていく。2020年4月には病床数を減らすことも決定しており、経営の健全化を図っていく。

 ここで問題になるのが、人件費だ。「当院は医師が足りず、その分を時間外労働で補うので残業代がかかります。常勤医を増やせば人件費は減らせるが、そもそも県内には医師が少なく、雇うことができない厳しい状況です」

 ただ、光明は見えている。「高知大学医学部が取り組んできた地域枠や奨学金制度がやっと実を結び、卒業生が出始めました。今後に期待しています」

 幡多地域にはこれまで子育て世代の中堅医師が定着していなかったという。「ここは人がやさしく住みやすい。医療を実践しやすい土地であることを広めたい」と、地道な啓発活動で解決を目指している。

 「はた家はみんなでひとつの大家族やけん」と矢部氏。ハードとソフトの両面で地域医療を支えていく。

高知県立幡多けんみん病院
高知県宿毛市山奈町芳奈3 ―1 ☎0880―66―2222(代表)
http://www.pref.kochi.lg.jp/hata/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる