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必要とする子にロボット支援下手術を

必要とする子にロボット支援下手術を

順天堂大学医学部 小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授(やまたか・あつゆき)

1985年順天堂大学医学部卒業。英Alder Hey小児病院留学などを経て、
2006年から現職。

 小児を対象としたロボット支援下手術で、計17例(2020年4月末現在)の実績を有する順天堂大学医学部小児外科・小児泌尿生殖器外科講座。同講座を率い、胆道拡張症などに対するロボット支援下の小児外科手術をリードする山髙篤行主任教授に、その現在地、そして未来への思いを聞いた。

―小児のロボット支援下手術に力を注がれています。

 私たちの講座では、これまでも腹腔鏡、胸腔鏡、後腹膜鏡といった内視鏡を使った低侵襲手術に力を入れてきました。同時に、内視鏡による外科手術の難しさにも常に向き合ってきたとも言えます。

 内視鏡外科手術の欠点は、運針の難度の高さです。臓器の剝離などは開腹とあまり変わりないと思いますが、縫合の難度はかなり高く、外科医に求められる集中力や、運針に伴うストレスは、並大抵のものではありません。

 しかも、小児は臓器が小さい。例えば、体重10キロ程度の子どもの場合、尿管は直径約5ミリです。その細い尿管と尿管を吻合(ふんごう)する技術と精神力が小児外科医に求められます。その負担を少しでも軽くしたいと考え、手術支援ロボット「ダビンチ」に着目したのです。

―実際に取り組んでみていかがですか。

 運針作業が、想像以上にスムーズにできることに驚きました。縫合や吻合の質も、開腹手術とほとんど変わらないと思います。

 また、「ダビンチ」を使った手術は内視鏡外科手術に比べると、技術を習得するためのラーニングカーブが短いという利点もあります。

 ただし、手術時間は長くなります。開腹の場合に3時間程度かかる手術が「ダビンチ」の場合は1・5倍の4時間半から5時間。時間的には長くなりますが、術者の精神的負担はかなり軽減されている実感があります。

 術後、子どもたちが回復するまでの時間も短縮されました。開腹手術の場合は、手術の翌々日まで痛みが続く場合も多い。しかし、痛みがあるからと、ベッドでじっと寝ていると、肺の合併症を起こすリスクが高くなります。

 ロボット支援下手術の場合、翌々日には病院内を歩き回れるほどです。子どもたちのQOLを考えると、低侵襲な手術を提供することは、小児外科医の使命ではないでしょうか。

―小児外科でのロボット支援下手術の可能性は。

 残念ながら、小児外科分野でロボット支援下手術を実施している施設は国内にほとんどありません。

 背景には高額な手術費用の問題があります。2020年4月、腎盂(じんう)形成術が新たに保険適用になりましたが、ロボット支援下手術の多くが自費です。当院は病院側が費用を一部負担しています。そこは病院の経営判断になります。

 現在、日本小児外科学会と日本肝胆膵外科学会の協力を得て、他病院と連携しながら胆道拡張症に対する症例数を増やしたいと考えています。

 症例数が多くなり、ロボット支援下手術のメリットを明確に示すことができれば、保険適用の範囲も広がるでしょう。費用の問題が解決すればロボット支援による小児外科手術は、もっと普及するのではないかと考えています。

 また、小児対象の鉗子(かんし)の開発など新たな医療機器研究にも取り組みたいと考えています。現状の「ダビンチ」の機能では、腹部に開けた穴から実際に手術をする部分まで、約10センチの距離が必要。それにより新生児など体の小さな小児には安全面から手術ができていないのが実情です。

 この課題を解決するために、また今後、多くの子どもたちがロボット支援下手術を受けられる環境をつくるためにも、これからも全力を尽くしていきます。

順天堂大学医学部 小児外科・小児泌尿生殖器外科
東京都文京区本郷2―1-1
☎03―3813―3111(大代表)
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/shonigeka/

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