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必要とされる医療は? 私たちは悩み続ける

必要とされる医療は? 私たちは悩み続ける


理事長(やまもり・つみお)

1973年岐阜大学医学部卒業。
岐阜大学医学部附属病院、岐阜県立岐阜病院(現:岐阜県総合医療センター)、
国保関ケ原病院(現:国保関ケ原診療所)、岐阜県立下呂温泉病院理事長兼院長などを経て、
2017年から現職。

 医療機関を取り巻く状況が目まぐるしく変わる中で、岐阜県立下呂温泉病院が、地域と向き合うための理念として定めたのは「生活の場の医療」だ。未来を予測するのは難しいが「私たちが地域ですべきことは分かっている」と、山森積雄理事長は語る。

─現状についてどのように捉えていますか。

 毎年、正月になると「10年後の医療はどうなっているのだろうか」と予測しています。数年ほど先の短期的な見通しなら、ある程度は当てることができる。しかしながらそれ以降は、私が考えていた医療とはまったく別の形になっていくのが常です。

 2000年に介護保険法が施行された際には「医療のあり方がガラリと変わっていくのではないか」と直感しました。しかし、現在に至っても、思っていたほど医療と介護の連携は伸びていない。

 また、2004年に初期臨床研修制度が始まり、医師たちの勤務先の選択肢が広がりました。大学は従来と同じように医局を運営することが難しくなり、地域への医師の派遣にも影響を及ぼしたのです。

 その代わり各地に医師が分散することになって、結果的にはなんとか地域医療を維持していくことができるだろう。そう考えていましたが、医師不足は深刻化するばかりです。

 近年、医療業界に特化した転職エージェントを通じて、コンスタントに医師を獲得しています。2014年の移転で病院が新しくなり、全室を個室とするなど特徴を打ち出したことが一つの呼び水となっているのでしょう。

 こうした前向きな要素はあるものの、地域に必要な医療を届けるという観点で見れば、まだ医師の数は十分ではありません。

─地域でどのような役割を果たすことが重要でしょうか。

 下呂温泉病院は「どのような疾患の患者さんも受け入れる地域完結型の医療」を目指してきました。医師が減少していくこの状況下では、方向性を見直さざるを得ません。

 そこで、私たちは「地域にとって欠かすことができない医療」だけに絞ることにしたわけです。

 高度な技術が求められる医療は、都市部の医療機関に担っていただく。この地域で暮らしている人々にとって、近くになければ困る医療。例えば透析医療、小児医療などは、当院ができる限り守り続けていく。理念として「生活の場の医療の提供」を掲げている背景には、このような考え方への転換がありました。

─公立・公的病院再編など、今後もさまざまな変化が訪れます。

 国民皆保険制度の確立は1961年。保険料を徴収しておきながら、近隣に受診できる病院がないのはいかがなものか。そんな地域の課題を解決し、高まり続けるニーズに応えることができる医療提供体制を整備しようと、公立病院や公的病院が各地域につくられました。

 地域医療構想が進められる中で、将来的に必要な病床数は大きく減少することになります。また、国が公表(2019年9月)したように、公立・公的病院は再編を迫られています。

 「医療費の抑制」という問題だけは、昔からずっと変わっていないと感じます。ただ、その施策は目まぐるしく変わっている。私が予測する「10年後の医療」は、ますます当たらなくなるでしょうね(笑)。

 高度な専門性を駆使して難しい疾患を治す医師のことを、世の中はしばしば「名医」と呼びます。私が考える名医とは、患者さんに寄り添って、悩みながら医療と向き合うドクターであり、迷う医師(迷医)こそが名医であると考えます。

 地域医療が厳しいことは変わらない現実。困っている患者さんたちに何ができるか? 私たちは悩み、考え続けていくのみです。

地方独立行政法人 岐阜県立下呂温泉病院
岐阜県下呂市森2211
☎0576─23─2222(代表)
https://www.gero-hp.jp/

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