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心臓血管外科領域で世界トップレベルを目指す

心臓血管外科領域で世界トップレベルを目指す

九州大学大学院医学研究院 循環器外科学
塩瀬 明 教授(しおせ・あきら)

1995年九州大学医学部卒業。
米ピッツバーグ大学医療センター胸部外科、米テンプル大学病院心臓血管外科、2016年現職に就任。
九州大学病院ECMOセンター長、同ハートセンター長、同病院長補佐兼任。

 2019年6月27日、九州大学病院で手術支援ロボット「ダビンチXi」を駆使した僧帽弁形成術が初めて実施された。九州で唯一の心臓移植認定施設でもある、九州大学心臓血管外科を率いる塩瀬明教授に、現況と今後の展望を聞いた。

―ダビンチによる心臓手術を開始した経緯は。

 九州大学病院は、最新技術を用いて低侵襲で安全な医療を提供する方向性を目指しています。心臓手術については、私は完全内視鏡下による僧帽弁形成手術などを以前から手掛けています。低侵襲で傷の大きさはロボット手術とさほど変わりはありません。

 2018年まで当病院には、従来型のダビンチSi1台でしたが、2019年、最新鋭のダビンチXiが2台導入され、一挙にパワーアップしました。

 XiはSiと比較して、ロボットアームの可動域が非常に広く、細かく深い部分でも処置が可能。高性能3Dモニターによる鮮明な画像など、心臓手術に必要なクオリティーが高いと判断しました。そこで導入の検討段階から、将来を見据えたロボット支援手術へのシフトを準備しました。

―運用には厳しい条件があると聞きます。

 ロボット心臓手術関連学会協議会は、ダビンチ支援手術に関して厳格な指針を設けています。私たちはMICS(低侵襲心臓手術)チームを編成して実績を重ね、ダビンチによる手術に臨みました。さらに最初の3例はプロクター(ロボット支援手術を安全に行うための認定指導医)の立ち合いが義務づけられています。そのステップを全部クリアして独立施設として認められました。

 Xiを遠隔操作するコンソールサージャン(術者)とベッドサイドサージャンは、それぞれ別の資格が必要で、トレーニングを受けて認定されます。組み合わせが変われば、最初からトレーニングを受けねばならないなど厳格な決まりがあります。チームワークがスムーズに機能することも大切なので、看護師やほかのスタッフも可能な限り固定しました。

 一般的に1システムにコンソールは1台ですが、当院のダビンチXiは、コンソールを2台装備しているのが特徴です。次世代を担うスタッフが術者とは別のコンソールに入って、術者である私とまったく同じ視野で手術を実感してもらうためです。

 医師や学生が3D大画面で手術を手に取るように見ることが可能になり、こんなに良い手術教育システムはないと思います。

 若い世代はコンピューターゲームに慣れているせいか、ロボット手術に抵抗感がありません。心臓血管外科の希望者がさらに増えてほしいと期待しています。

―運用後の反響は。

 11月現在で手術症例は僧帽弁形成術が3例、心房中隔欠損症と冠動脈バイパス術の血管採取が各1例となりました。2018年度にロボット支援手術が保険適用となって以降、問い合わせが結構多く、患者さんの期待の大きさを感じます。ただ、すべての心臓疾患が対象ではありません。心停止して行うので安全が最優先です。慌てないでじっくり時間をかけて習熟していく方針です。

―今後の目標は。

 当病院は九州でただ1カ所の心臓移植認定施設であり、移植実績は10月6日に30例となりました。心臓移植には開胸が必須なので、ロボットは適応しません。

 ロボット心臓手術は将来の一つのあり方です。さらに装置が小型化して通信速度が速くなって解像度がもっと上がり、人工知能(AI)が導入されると、今までにない医療が実現する時代が来るでしょう。

 ただ、何かあった時には開胸手術に切り替えて必ず救命する、それは外科医にしかできません。開胸手術のスキルは高いレベルで維持していくべきです。


福岡市東区馬出3―1―1
☎092―641―1151(代表)
http://cs1.med.kyushu-u.ac.jp/

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