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心、技術、地域貢献 求められる人材育む

心、技術、地域貢献  求められる人材育む

独立行政法人国立病院機構
江﨑 宏典 院長(えざき・ひろのり)

1981年長崎大学医学部卒業。
同大学医学部附属病院、川崎医科大学総合臨床医学講座教授、
長崎医療センター統括診療部長などを経て、2012年から現職。

 長崎県央部に位置する高度総合医療施設の長崎医療センター。人材育成では、1971年に医師の臨床研修病院に指定されて以来、プライマリ・ケアに重点を置いて若い医療人を育ててきた。江﨑宏典院長に取り組みの成果を聞いた。

―医師の臨床研修で重視する点は。

 大きく三つあります。人格のかん養、基本的診察能力の習得、地域医療への貢献の意識付けです。いずれも、国のガイドラインでも挙げられる要素で、中でも基本的診察能力の習得は診療科に関わらず重要。ことあるごとに「当たり前のことが当たり前にできる医師になろう」と伝えます。

 当たり前のこととは、何はさておき救命措置です。医師の最大の使命は人命を救うことで、心肺蘇生に習熟し、緊急点滴用の血管も確実に確保できる基本動作を行えるようにする。特定の高度な「神業」を持つ医師も必要ですが、まずは迅速かつ着実に使命を全うできる医師こそ、地域に求められている人材だと考えます。

 意思疎通のスキルも「当たり前」に身に付けてほしい。患者さんやその家族と丁寧に話し、的確な診療につながる情報を過不足なく得る。治療の説明でも相手の立場に立つ。科学者の視点で患者を診て、考察したことを資料や論文にまとめ、同じ医療者に伝えることも不可欠。救命措置と意思疎通の力を磨くために初期臨床研修の2年間があると言い切っていいでしょう。

―理念の実現に向けた取り組みは。

 初期医療研修で各診療科を回るプログラムの中で、総合診療科の研修期間を長めにしたり、通常は「選択必修」の外科や小児科も必修にしたりしています。

 1カ月の地域医療研修では原則、長崎県の特徴でもある離島の医療機関を研修先に選んでもらいます。当院とは役割、環境、資源が大きく異なる現場で患者さんや医療者とふれ合いながら、「地域のために自分に何ができるか」を考えるきっかけにしてほしい。私も壱岐の出身。へき地医療の課題は肌身で感じています。離島地域には当院の卒業生も多く、後輩たちの面倒を親身になって見てくれます。

 当院には、研修医の教育や医学生の病院見学をサポートする「教育センター」があります。専属のスタッフ数人が研修医のマッチングを行う窓口や、研修中の相談や評価、修了判定に関わる事務を担い、切れ目のないフォローアップをしています。毎年70~80人の新人が入る看護師については、病棟を受け持たない「教育担当師長」を1人配置。キャリアアップを含めた研修を受け持っています。

―現状と課題は。

 2021年度採用の研修医のマッチングは、プライマリ・ケア養成プログラム15人、周産期プログラム4人と、いずれもフルマッチでした。自治医科大学からの1人を加え、20人を採用予定で、5年連続のフルマッチ。20年度と同様に総合診療科や内科系の志望が多い傾向が見られました。

 直面する課題は、新型コロナウイルス感染拡大の中での研修運営です。病棟での勤務で学ぶことはほぼこれまで通りできますが、それ以外の「生きた機会」を得にくい状況は続きます。

 例えば、先輩医師たちとの勤務時間外の交わりで学ぶことは多いのですが、会食や勉強会は困難。学会発表の機会も限られたため、代わりに院内で疑似発表会を開きました。医学生の病院見学会や研修医採用面接ではウェブを導入。ただ、現場を直に見たり、会って話をしたりしないと分からないことが多いのは確かです。

 当院では、薬学部生と病院敷地内にある活水女子大学の看護学生、各種の技士を目指す学生たちの実習や研修も手がけています。当院で育った医療人が生き生きと力を発揮し、地域に貢献できるよう、環境の変化に柔軟に対応しながら人材育成に力を注ぎ続けます。

独立行政法人国立病院機構
長崎県大村市久原2―1001―1
☎0957―52―3121(代表)
https://nagasaki-mc.hosp.go.jp/

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