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役割分担を徹底し 持続可能な救護活動を

役割分担を徹底し 持続可能な救護活動を

日本赤十字社   院長(つじ・ひさし)
1979年岡山大学医学部卒業、同第二外科入局。
岡山赤十字病院、倉敷市立児島市民病院(現:倉敷市立市民病院)などを経て、2017年から現職。


 昨年7月、各地に甚大な被害をもたらした西日本豪雨。倉敷市真備町では堤防の決壊により同地区の約4分の1が水没、犠牲者は50人を超えた。岡山赤十字病院のDMATと救護班は災害発生翌日に現地入りし、活動を展開。陣頭指揮を執った辻尚志院長に聞いた。

―被災地での活動内容は。

 幸い当院は被害を免れました。そこで真備町が浸水した7日には、当院の災害医療コーディネーターが日本赤十字社岡山県支部とともに現地を視察。同時に、院内にも災害対策本部を設置しました。

 翌朝、要請を受けてDMATを招集。岡山大学病院を経て現地に入りました。最初のミッションは避難所のスクリーニング。向かった薗小学校はまだ現場が統制されておらず、状況報告のみを行いました。

 次に、屋外に設けられた二万橋救護所でのトリアージ。自衛隊や消防が搬送したまび記念病院の患者さんを診て、倉敷市内の救急病院への入院避難を夜中まで行いました。DMATの出動はこの1回です。

 同日から、救護班も活動を開始。目的の岡田小学校までのルートは危険区域が多く、到着するのにかなり手間取りました。電波状況が悪く、情報も得られにくい状況でしたね。

 それでもなんとか日帰りが可能と判断し、以降メンバーは交代で活動。構成は医師2人、看護師2人、薬剤師、主事2人の6~7人体制。薬剤部長の判断で、全班に薬剤師を加えました。豪雨でお薬手帳を流されてしまった方が多く、非常に役に立ったと聞いています。災害による直接的な重傷はなく、例えば家の片付けでケガをしたとか熱中症になったなどの健康被害が多かったですね。

 9日、倉敷市保健所に「(通称:)」が開設され、以降、救護班はクラドロからの指示で活動。20日まで計15班が毎日出動しました。

 その後は、こころのケア班を単独で派遣。災害対策本部を廃止したのは7月31日でした。災害医療コーディネーター、、救護班、こころのケア班、主事の計163人が活動しました。


―得たことや課題など。

 難しいのは全体のコーディネート。いかに早く正しい情報を集め、人員を機能させるか。災害時に100%正しい判断なんて誰もできないが、やっていることは間違いじゃない。

 だから、反省というよりしっかりと検証をして、次に生かせばいい。一番大事なのは役割分担です。よく勘違いされますが、DMATは救出部隊ではない。それは自衛隊や消防の役目で、DMATは救出された患者さんをトリアージし、搬送するのが役割。なぜもっと早く動かないのかという意見はいつも出ますが、現場が安全だと確認できなければ派遣はできません。

 自分たちの身を守ること、そして支援に関わるスタッフがつぶれないケアも大事。1人が頑張り過ぎなくてもいいシステムが欠かせません。そのためには災害対応の有資格者を増やし、役割分担を意識した訓練を重ねることが必要でしょう。


―今後のためには。

 具体的な被害をある程度予測し、準備しています。災害時におけるBCP(事業継続計画)ですね。ここが被害を受けたとき、どうやって機能を回復し、何に取り組むか。プランを策定して、訓練を行い、見直す。その繰り返ししかありません。

 今回の件を受けて、BCPの見直しを進めているところです。今年度中にまとめたいですね。われわれの使命は、防ぎえた死をいかになくすかです。せっかく助かった人たちの命を守る、二次被害が起こらないよう全力を尽くす。

 災害救護は赤十字にとって大きな役割の一つですし、職員は皆、その役割を担っていると自負しています。できる準備はしておくつもりです。


日本赤十字社 岡山赤十字病院
岡山市北区青江2―1―1
☎086―222―8811 (代表)
https://www.okayama-med.jrc.or.jp/

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