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強迫性障害に悩む患者と家族の伴走者として

強迫性障害に悩む患者と家族の伴走者として

兵庫医科大学 精神科神経科学講座
主任教授(まつなが・ひさと)

1988年大阪市立大学医学部卒業、同神経精神医学教室入局。向聖台会當麻病院、
米ピッツバーグ大学留学、大阪市立大学医学部神経精神医学教室講師などを経て、
2010年から現職。

 強迫スペクトラム障害や不安障害のオーソリティーである松永寿人主任教授。豊富な治療経験を生かし、診断基準の検討やガイドライン作成など、疾患の全体像を浮き彫りにする活動にも携わってきた。

―強迫性障害の現状は。

 正常・異常の区別が難しいのがこの病気。反復的な思考衝動にとらわれる強迫観念と、手洗いや確認などを繰り返す強迫行為が主な症状です。現在、当科にかかっているのは700人超。私の患者さんの7割は強迫症関連ですね。

 データでは人口の1~2%の患者さんがいると推定されますが、受診するのは重症で、しかも家から出られる人だけ。心配が過ぎて外出できず、引きこもる人は多いと思われます。

 強迫性障害には多くの関連症群があります。醜形恐怖症や、においへの不安、抜毛する、かさぶたを剝がす、ゴミをため込むなど。心気症でドクターショッピングを繰り返すのもそうです。

 ニーズに対し、専門に診る施設はわずか。病診連携が進むよう、病気への理解を広めることが課題の一つです。特に関連症群は病識が持ちにくいため、患者さんは皮膚科や内科へ行くケースが多い。他科とのコラボレーションも課題です。

―精神疾患の診断統計マニュアル「DSM―5」や、国際疾病分類「ICD―11」などの検討委員として国際的にも活躍されています。

 「DSM―5」では、強迫性障害は不安障害から分離されて新カテゴリーとなりました。2019年に採択、2022年に発効予定の世界保健機関(WHO)の国際疾病分類「ICD―11」でも、独立した診断カテゴリーとして加わります。

 日本不安症学会と日本神経精神薬理学会が合同で策定中の「不安症・強迫症治療ガイドライン」は、6月に最終報告予定。私たちの臨床現場のデータを、エビデンスとしてオープンにすることが目的です。

 これらの策定は、強迫性障害が一つの疾患としてより広く認知されるチャンス。県医師会の講演会でも紹介したところです。先生方への啓発を進め、より連携を強めたいですね。

―治療に対する手応えは。

 治療法自体が大きく発展したという実感はまだありません。決め手となる薬が見つかりづらいのに対し、認知行動療法の技法はある程度固まっている。うまく併用することが大事です。

 とにかく強迫症はバリエーションの多い病気。策定中のガイドラインも、メインの症例しかカバーできていません。

 ガイドラインを作る立場からは真逆の話になってしまうのですが、実際の治療はほぼオーダーメード。患者さんの「ストーリー」をどこまで理解できるかが主治医の力量であり、かつ適切な治療につながる重要なポイントです。患者さんとどう目標を共有し、実現しながら自信を回復させるかですね。

 もう一つ大事なのは、客観的なアセスメント。病状を数値化し、情報を組み合わせて診ることです。それで患者さんが回復し、結婚したり資格を取ったりと夢をかなえる姿を見るのは、本当に医師冥利(みょうり)に尽きます。

 当大学で残された期間は、あと7年。幸い、頼もしい若手が育っています。培ってきたものをできる限りつなげたいですね。

―そのほか、医局の強みや地域での役割を。

 大阪から15分、神戸から30分の都市型病院。うつ病などのストレス性疾患が多数を占めます。精神科入院施設が少ない地域なので、開業医からの相談や入院依頼、入院患者のコンサルテーションなども多いのが特徴です。

 妊産婦のメンタルヘルスも強みです。また、認知症疾患医療センターを通して、地域の先生からの診断依頼も積極的に受けています。地域でお困りの場合には、ぜひ声をかけていただきたいですね。

兵庫医科大学 精神科神経科学講座
兵庫県西宮市武庫川町1─1
☎0798─45─6111(代表)
https://www.hyo-med.ac.jp/department/npsy/

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