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強い使命感を持ち地域医療の復興へ

強い使命感を持ち地域医療の復興へ


院長(おいかわ・ともよし)
1987年福島県立医科大学医学部卒業。
福島赤十字病院脳神経外科副部長、南相馬市立総合病院副院長などを経て、2017年から現職。
福島県立医科大学臨床教授、広島大学客員教授兼任。

 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響により、広範囲での居住制限や地域住民の避難を余儀なくされた福島県相双地域。地域の基幹病院としての役割を担う南相馬市立総合病院は、遠隔透析などの施策で地域医療の課題解決・復興に取り組んでいる。

―南相馬市を含む相双地域の現状をお聞かせ下さい。

 東日本大震災直後、南相馬市の人口は約7万人から1万人以下まで減少しました。現在は約5万5千人まで回復しましたが、若い世代の多くは市外での避難生活を続けており、帰還者のほとんどは高齢者です。そのため、急速な少子高齢化が進んでいます。

 同時に医師不足も深刻です。現在、相双医療圏の医師偏在指標は全国で下から13番目、外来医師偏在指標は最下位です。震災以前から医師は不足していましたが、震災後はさらに問題が顕在化してきました。

―2018年に遠隔透析を開始しました。 

 震災以降、相双地域では四つの病院が透析医療を行ってきましたが、設備や医師数の問題により、地域にいるすべての患者さんをフォローできない状況でした。車で片道1時間以上かけて、他地域の施設へ通院せざるを得ない「透析難民」は40人以上。加えて、地元での透析が可能であれば、避難先から帰還したいと考えている患者さんも数多くおられます。

 この問題を地域の関係者と検討した結果、「他の病院ができないことを補完するのが市立病院の使命」と考え、当院での透析診療を決断しました。しかし、当院には専門の医師もスタッフもいない。そこで福島県立医科大学に相談し、2018年3月から遠隔透析をスタートさせたのです。

 診療の流れは、当院と福島県立医科大学附属病院を専用回線でつなぎ、まず当院のスタッフが患者さんの体調に応じて透析の設定を行います。それを大学病院にいる専門医が確認し、透析中は患者さんの画像や数値などを両者で共有。異常の兆候が見られた場合には専門医が助言し、緊急時はドクターヘリを使って大学病院などへ搬送する体制を整えています。透析医療において「病院と病院を結ぶ遠隔診療」は全国初の試みです。

 現在、透析診療は7床、週3回、午前と午後に分けて計9人の患者さんが透析を受けています。今年度中には14人に増える予定で、来年度は21人が目標です。そして、将来は当院にも透析の専門医を配置したい。今は体調が安定した患者さんのみ対応していますが、いずれは実際の診療と遠隔診療を両立しながら、できるだけ多くの患者さんを受け入れたいと思います。

―その他の取り組みは。

 高齢化対策の一つとして、2017年11月に「地域包括ケア病棟」を開設しました。ここではポストアキュート、サブアキュートに対して、在宅復帰に向けた医療を提供しています。具体的には、退院前の患者さんや、地域にいるフレイル状態の高齢者にリハビリなどの医療・支援を行い、自宅や介護施設での生活を継続させる取り組みです。現在、当院では約20人のリハビリスタッフが勤務し、地域包括ケア病棟には常時30人程度が入院しています。

 また、福島第一原子力発電所事故における放射線の影響を包括的に研究する「地域医療研究センター」を2018年7月に設立しました。当院では事故直後、鳥取県から貸与されたホールボディカウンターによる内部被ばく検診を開始。現在も南相馬市内の小・中学生を対象に年2回の定期検診を続けています。それらの結果分析や実態調査などが当センターの役割です。

 2020年は東日本大震災から10年目の節目を迎えます。当院に蓄積されている原発事故関連の地域医療データは膨大です。これらをさまざまな形でまとめ、社会に発信・提言していきたいと思います。

南相馬市立総合病院
福島県南相馬市原町区高見町2−54−6
☎0244―22―3181(代表)
http://m-soma-hsp.com/

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