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常識にとらわれず発想の転換で道を開く

常識にとらわれず発想の転換で道を開く


教授(もりた・えいしん)

1982年広島大学医学部卒業。
西独キール大学皮膚科、広島大学医学部附属病院、
島根医科大学皮膚科助教授などを経て2004年から現職。
島根大学医学部附属病院アレルギーセンター長兼任。

 食物アレルギーの分野において、優れた研究成果を発表し続けている島根大学皮膚科学講座。同講座を率いる森田栄伸教授は、2019年で就任から15年となった。これまでの足跡を振り返りつつ、山陰の皮膚科医療の現状、そして今後の展望について聞いた。

―就任15年が過ぎました。

 目まぐるしく皮膚科医療が変化するとともに、国の考えや方針の変化にも対応を続けてきました。体制の面で大きかったのは、2017年に形成外科の診療科を設置したことです。複雑でハイレベルな医療を院内で完結できるようになり、患者さんにも喜んでいただいています。

 この15年で抗体製剤が飛躍的に増えた印象があります。皮膚科から始まって応用されているものも、たくさんあります。まだ高価ですが、治療効果は大きいので、いかに治療に取り入れるか。われわれの腕が問われていると言えます。

 また、弁の機能が働かなくなった結果、足がむくんでしまう下肢静脈瘤に対するレーザー治療にも対応しています。通常は血管外科で治療に当たることが多い疾患ですが、島根大学では、皮膚科が担当しています。

 山陰の全地域から、患者さんが来院されています。マイクロサージャリー治療も可能で、県外に足を運んでいた患者さんの負担を減らすことにつながりました。

―アレルギーセンターを開設されています。

 国が推進するアレルギー疾患医療拠点病院に指定されるべく、2017年にアレルギーセンターを開設しました。皮膚科が中心となって小児科、耳鼻咽喉科、消化器内科、呼吸器・化学療法内科、眼科の6診療科の壁を取り払った組織です。

 連携の重要性は誰もが理解していますが、実際に足並みをそろえるのは簡単ではありません。現在では横断的な医療を実践できています。

 皮膚科では、食物アレルギーの研究を進めてきました。中でも、小麦アレルギーにおいて「オメガ―5グリアジン」という診断キット開発には高い評価をいただきました。今では日本中から検体の依頼があり、紹介いただく患者さんの数も増えています。

―山陰の現状は。

 皮膚科医の人材が不足しており、その中でいかに診療体制を整えていくのか。医師の偏在についての状況は、就任以降も変わらず、引き続き取り組みたいと思っています。

 人口減少に伴う患者数の減少、患者さんの高齢化によって合併症が出やすいことが課題となっています。安静期間が長いと、それだけ身体機能が落ち、合併症のリスクがさらに高まりますから、細心のケアが求められます。

―今後の展望を。

 小麦アレルギーについては、小麦成分が入った化粧品などに対するアレルギーについて研究してきました。ただ、小麦アレルギーの根本的な解決にもっと貢献したいという思いがあります。

 そこで、小麦アレルギーの原因であるタンパク質を含まない、特殊な麦の栽培に挑戦しています。島根県の益田市で育てているのですが、この事業は食生活におけるQOLを上げる、地元の産業を育成する、という二つの狙いがあります。

 大量生産するためには、独自の製粉施設や人手の確保が必要です。実現するには、まだ越えるべき壁があります。それでも、この麦を食べることでアレルギー完治の可能性まで見込めることから、大きな期待を寄せていただいています。

 後進の育成も重要です。柔軟な「発想の転換」と常識にとらわれない姿勢で、研究できる人材を育てたい。そこに必要なのは、常識を疑って自ら考える力です。分からないことを自分で考え、新しい発想ができるような人を育てていきたいと思います。

島根大学医学部 皮膚科学講座
島根県出雲市塩冶町89―1
☎0853―23―2111(代表)
https://shimane-u-dermatology.jp/

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