島根大学 医学部内科学講座(内科学第二)
石原 俊治 教授(いしはら・しゅんじ)
1988年島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)卒業。
島根県立中央病院、島根大学医学部内科学講座(内科学第二)准教授、
同附属病院IBDセンター長などを経て、2019年から現職。
研修医時代の患者との出会いが原点となり、炎症性腸疾患に長年取り組んできた。島根大学医学部附属病院IBD(炎症性腸疾患)センターの設置にも尽力し、2019年8月に教授に就任。患者一人ひとりに向き合ってきた石原俊治教授に、今の思いを聞いた。
より難しい疾患に挑む
内視鏡を用いた消化器疾患の臨床と分子生物学を用いた病態解明の研究に取り組む島根大学医学部の内科学第二講座。石原教授を中心に、難病にも果敢に立ち向かっている。
「私自身、炎症性腸疾患に長年取り組んだこともあり、クローン病などいわゆる難病も幅広く扱っており、分子標的薬などを使った治療を推進しています」
島根県の西部や県庁所在地の松江からはもちろん、関東や関西、沖縄などからも、患者さんがやってくるという。
「前任の木下芳一先生の時代に好酸球性食道炎や胃腸炎に取り組み、多くの患者さんが集まることになりました。ここでしかやっていないような特殊な食事療法もあります」。試験的にさまざまな治療に取り組んできた土壌がある。
「ほかと同じではありたくない」という思いから、より難易度の高い疾患に、取り組み続けてきた。メンバーは20人程度で構成。留学生も多い。国際的な感覚も大切だと石原教授は考えている。
「現在は中国、春にはバングラデシュから留学生が来ます。アメリカからも留学生が帰ってきます。なるべく殻に閉じこもらないように、海外での交流も積極的に勧めています。大学内部でも分野にこだわらず、活発に交流をしています」
患者から学ぶ
原点は苦しむ同世代の患者だった。「研修医だった1988年から5年ほど、島根県立中央病院にいました。なぜか、炎症性腸疾患の患者さんの担当になることが多かったことが、きっかけとなりました」
まだ治療法もほとんどなく、自らの無力さを感じることもあったという。「この病気は、未来ある10代や20代の患者さんが多く、治らず難儀している。同世代の患者さんと接する中で、問題意識が芽生えました」
何とかしたい。その一心で大学に戻ってからも情報を集めては、県内の保健所や患者会を自ら訪ねて回った。熱意が実り、少しずつ炎症性腸疾患の患者が大学に集まるようになった。「たくさんの患者さんを診て、学びたいという気持ちが届いたのだと思います。さらに、モデルマウスを使って病態を研究し、治療法を探す日々でした。基礎研究であっても、漫然とやっていては意味がありません。常に、患者さんにリンクさせる形で取り組んでいました」
2015年にはIBD(炎症性腸疾患)センターを設置し、センター長に就任。消化器内科医だけでなく、精神科医や地域医療連携センターのスタッフなどを巻き込んだチームとして診療を始めた。「患者さんが不自由なく日常生活を送れるようにしたいという気持ちは、今も変わりません」
人材不足を解決しさらなる挑戦へ
「マンパワーの不足は深刻で、入院待ちの方が何十人もいます。関連病院に医師を派遣しており、地域連携はもっと強化したいところですが、大学の中も忙しくやや疲弊気味です」。もっと、この分野の魅力をアピールし、若い医師を育てていきたいと願う。
「目の前の患者さんを大事に」という原点を常に意識しながら、石原教授は未来を見据える。
「胃腸は、全身に影響を与える臓器です。今後は、他臓器とのオーバーラップについて取り組みたいと思っています。ほかの領域との橋渡しをするために何ができるのか。今後の大きなテーマですね」
島根大学 医学部内科学講座(内科学第二)
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