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希少難病HAM患者向け オンライン診療が開始

希少難病HAM患者向け オンライン診療が開始

 難病治療研究センター
山野 嘉久 教授 (やまの・よしひさ)

1993年鹿児島大学医学部卒業。
米国立衛生研究所(NIH)研究員などを経て、2008年から現職。
聖マリアンナ医科大学大学院先端医療開発学教授兼任。

 2019年8月、聖マリアンナ医科大学病院の難病治療研究センターは希少難病「HTLV ―1関連脊髄症(以下、HAM)」の患者向けにオンライン診療を開始した。専門医による遠隔医療を全国どこからでも受けることが可能となり、各地で注目を集めている。HAMを専門とし、難病治療研究の最前線に立つ山野嘉久教授に話を聞いた。

―センターの特徴は。

 先端医療の提供だけではなく、難病全般に関する病態解明や創薬研究、疫学研究やガイドライン作成などの研究を行っています。また、政策的な活動にも参画しています。

 2019年9月に厚生労働省から「がんゲノム医療拠点病院」に指定されました。大学病院内にゲノム医療推進センターを立ち上げ、がんゲノム医療を提供するための整備を進めているところです。

―HAMのオンライン診療が開始しました。

 HAMはHTLV―1というウイルスが原因で起こる病気で、発症すると脊髄の神経に異常が起こり、歩行障害、排尿・排便障害や感覚障害などを引き起こします。

 有効な治療法はまだ確立されておらず、患者さんやそのご家族は大変な生活を強いられることになります。HAMは希少難病のため専門医による診療が必要です。当院には北海道や沖縄など遠方から通われる患者さんもいます。

 2018年度の診療報酬改定により、難病に対するオンライン診療料の指針ができ、保険適用が可能になりました。これを受け、全国のHAMの患者さんを対象にアンケートを行ったところ、通院に時間がかかっている方が全国的にも多く、オンライン診療を受けたいというニーズが非常に高いことが分かりました。

 そこでオンライン診療の実現に向け、業者選定の会議を重ね、会計システムの整備や電子カルテ共有のためのさまざまな調整を行いました。そのプロセスに1年ほどかかり、2019年8月にようやく開始できたのです。

 まずは当センターに通院中の患者さんから、試験的にオンライン診療を始めました。システム的にも事務的にもほぼ問題ないと分かってきたので、今後人数を増やす予定です。

 ある程度症状が落ち着いた患者さんを対象に、通院負担なしに専門的な診療を続けることができる、非常に新しい診療スタイルです。患者さんの満足度が非常に高く、付き添いの方にも大変喜ばれており、導入してよかったと感じています。

―今後の展望は。

 治療薬の開発です。ガイドラインを整え、ある程度標準的な治療を確立していく臨床疫学的な研究は、継続していかなければなりません。解明されていないこともまだ多く、難病研究を進めるには10年、20年の蓄積が必要です。

 現在はがんゲノム医療がメインですが、将来はがん以外の難病についてもゲノム医療が広く普及するでしょう。その対応も進めていきたいと思っています。

 難病の横断的な解析をするために「難病プラットフォーム」というデータベースの構築にも取り組んでいます。異なる疾患の情報とその原因についての研究データをひも付けておけば、新たな発見につながることもあります。データベース研究を根付かせ、難病研究の推進に少しでも貢献できればと考えています。

 難病と向き合っていると、さまざまなことで苦しんでいる患者さんを目の当たりにします。患者さんの身の回りのことがなかなか目に見えて改善しないというのが本音です。研究の成果を、患者さんが実感できるところまで到達させたい。同じような熱意で頑張っている多くの研究者や政府、行政の方と一緒に、日本の難病の研究を盛り上げていきたいですね。

聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター
神奈川県川崎市宮前区菅生2―16―1
☎044―977―8111(代表)
http://nanchiken.jp/

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