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島内完結の医療目指す 環境生かした研修も

島内完結の医療目指す 環境生かした研修も


院長(やさか・たかひろ)

1988年長崎大学医学部卒業。
国立がんセンター(現:国立がん研究センター)中央病院外科研修、生月病院、上五島病院院長などを経て、2019年から現職。
上五島病院顧問兼任。

 玄界灘に浮かぶ九州最北部の離島、対馬。島の中核病院である長崎県対馬病院は、少子高齢化に伴う公的病院の統合で5年前に開院した。医療機能の強化はどう図られたか。へき地医療の課題や強みは何か。八坂貴宏院長に聞いた。

―統合の経緯と新病院としての特徴を教えてください。

 長崎県と県内離島地域の市町が共同出資する「長崎県病院企業団」が運営していた3病院のうち、2病院を統合して2015年に開院しました。

 島の人口は今、3万人足らず。ピークだった昭和30年代の半分以下です。新病院の病床数は、統合した2病院の合計数よりも少ない275床とした上で、精神科や小児・周産期などの医療体制の維持を図りました。

 同時に医療機能を強化。総合腫瘍科や血液内科などが新設され、25診療科となりました。がん治療のレベル向上のため、放射線治療装置「リニアック」を導入。全国の離島医療機関の中でも先進的な試みです。現在、医師38人(パート含む)、看護師約200人の態勢です。

 一番の課題は医療人材の確保です。離島の多い県全体の長年の課題でもあります。県独自の奨学金制度、自治医科大学の派遣制度、長崎大の「地域枠」制度などにより、何とか人材を集めて運営してきました。

 奨学金制度は、在学中の奨学金の返還を免除する代わりに、卒業後は県内の医療機関に勤め、うち一定期間は離島勤務となる仕組み。看護師も類似の奨学金があり、県、市、病院がお金を出しています。この春、入職した看護師も、多くが奨学金制度を使っています。

 当院の医師は7人が地元出身。看護師もほとんどが地元に縁があります。かくいう私も対馬の出身です。

 救急患者の本土搬送には自衛隊のヘリコプター、県の防災ヘリ、民間のドクターヘリが24時間体制で使用可能。搬送件数は年間計50~60件です。

―島の中核病院として果たしたい役割は。

 できる限り島内で医療を完結できる態勢を整えていきます。対馬に限らず、患者さんの中にも「大病院志向」「本土志向」がある面は否めませんが、「島でできることは島でやらせてください」というのが本心です。

 それには私たち病院側の能力が問われます。各専門の診療部門、総合的な医療、地域包括ケア、救急医療…。いずれも高いレベルで提供した上で、島内で完結できないケースは迅速かつ適切に、島外の医療機関につなぐ。こうした態勢を整え、島民に安心して島の医療を利用してもらうことが私たちの役目です。

―人材育成の面で方策は。

 島の医療環境を生かした総合診療の研修の仕組みをつくりたいと考えています。

 現代の医療は細分化されていますが、医師には広い知識と技術、対応力が不可欠。何より人間力や心の部分が大事です。「医療は病気を治すだけでなく、誰かの人生を支えるためのもの」という原点を知ってこそ、良い専門医になることができます。

 それらを身をもって学ぶすばらしい環境が島にはあります。多様な患者さんの診療を手掛け、暮らしに寄り添い、ときには家庭の課題にも耳を傾ける。特殊な手術ばかりしてはいられません。

 学生や研修医が、へき地の現場に短期間でも身を置く経験を持てば、都市部に戻って高度な専門医療機関に身を置いたとしても、互いに分かり合うことができます。将来、改めてへき地医療を志すかもしれません。

 前任の上五島病院(長崎県上五島町)では、総合診療専門医の研修プログラムをつくり、全国から医師を受け入れていました。当院でも試みたい。若い医師は幅広く成長でき、当院は人材を定期的に受け入れられる。ウイン・ウインの関係で支え合う仕組みを目指したいと思っています。

長崎県病院企業団 長崎県対馬病院
長崎県対馬市美津島町雞知乙1168―7
☎0920―54―7111(代表)
http://www.tsushima-hospital.jp/

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