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山陰のQOVを支える 視機能を守る拠点に

山陰のQOVを支える 視機能を守る拠点に


教授(いのうえ・よしつぐ)

1981年大阪大学医学部卒業。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校プロクター研究所研究員、
大阪大学眼科学教室助教授などを経て、2001年から現職。

 新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、眼科医療にも、さまざまな影響を及ぼしている。眼感染症を専門にする井上幸次教授に、鳥取県の現状を中心に聞いた。

―眼科におけるCOVID―19の影響は。

 新型コロナウイルスは、口や鼻といった上気道の粘膜から感染します。日本眼科学会などによると、目の粘膜組織である結膜からも感染する可能性があるようです。頻度は少ないですがCOVID―19に結膜炎を併発する場合もあります。

 当大学医学部附属病院では、内視鏡を鼻に通して実施する「涙囊鼻腔吻合(ふんごう)術」など、医療従事者の感染リスクが高い手術・検査はPCRでCOVID―19陰性を確認してから行う方向で検討しています。

 また、角膜移植も、角膜の確保が難しくなったことにより、止まっている状況です。日本で移植に使われている角膜は、国内で調達されているものが50%程度で、それ以外は海外からの提供です。航空便が減便されていることもあり、海外からの空輸による角膜の確保も難しくなっています。

 国内の場合も、地域によっては献眼をストップしているところがありました。これまでは、県外から角膜を提供してもらうこともできていたのですが、それにも影響が出ています。

 医学は感染症の撲滅を目標に発展してきた側面もあり、眼科医療にとっても感染症は重要なテーマです。

 例えば、角膜ヘルペスの原因は、誰もが体内に持っているヘルペスウイルスですが、それに対抗する体の免疫がかえって角膜を混濁させ、視力を損ないます。ウイルスを抑えながら、視力を維持しなければなりませんので、治療のための薬剤投与のさじ加減が難しい。これからの研究の目標は、ウイルスの撲滅ではなく、いかにうまく共生していくかということにあるように思います。

 どんなに素晴らしい低侵襲な手術を実施しても、ひとたび目に感染症が起きれば失明につながりかねません。COVID―19の拡大によって、感染症の分野の重要性を改めて感じています。

―眼科の特徴や運営の課題について。

 鳥取大学医学部附属病院の手術件数のうち、およそ5分の1は眼科手術で、年間2500例を超えています。

 鳥取県の場合、大規模な眼科の病院などが少ないことや、県外に移動しにくい地形であることからも、大学病院に手術が集中するという背景もあります。

 教室としては、必要な手術をすべて提供できるような体制づくりを第一に考えています。

 眼科の手術の目的は、患者さんにとって目が「見えるか、見えないか」であり、結果が明確に求められます。ただ、教室の医師数は決して多くはありませんので、個々のスキルを磨くためには工夫が必要です。

 当教室では、専門に特化し、特定の医師がその分野の症例を数多く経験する形にすることで、スペシャリストを養成し、安全で質の高い手術を目指しています。

 既存疾患によって全身麻酔が必要な患者さんの白内障手術なども増加しています。鳥取県の場合、高齢化率も高く高齢者の健康寿命を保つためにも、視機能の維持は重要な課題です。

 医師の確保が難しくなっているのも事実です。働き方改革にも対応しなければなりません。特に眼科の場合、女性医師の比率が高いので、産休や育休を取得する時期への対応も求められます。

 対策の一つが、検査などをする視能訓練士(ORT)の増員です。医師の業務の一部をORTに移行することで、医師の負担は軽減できると思います。

 患者さんの視機能の質、QOV(クオリティ・オブ・ビジョン)を守ることが私たちの役割です。山陰の眼科の拠点としての責任を果たしていきたいと思います。

鳥取大学医学部 視覚病態学分野
鳥取県米子市西町36―1
☎0859―33―1111(代表)
https://www.med.tottori-u.ac.jp/ophthal/

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