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山口大学大学院医学系研究科 病態制御内科学講座 進歩する糖尿病治療 新たな治療法の可能性も

山口大学大学院医学系研究科  病態制御内科学講座 進歩する糖尿病治療  新たな治療法の可能性も

教授(たにざわ・ゆきお)
1983年山口大学医学部卒業。
米ワシントン大学、山口大学医学部附属病院などを経て、
2002年から同大学大学院医学系研究科教授。
2016年4月から2020年3月まで医学系研究科長、医学部長を兼任。
山口大学医学部附属病院第三内科科長、山口大学副学長兼任。

 内分泌代謝疾患などの発症素因を、遺伝子レベルで解明することを目指す山口大学大学院医学系研究科病態制御内科学講座。糖尿病の総合的診療と原因の追究に取り組む谷澤幸生教授に、近年注目されている治療薬や、研究の最新成果を聞いた。

―糖尿病治療が変わってきています。

 患者さんの負担を軽減する新しい薬が次々に開発されています。その一つに「DPP―4阻害薬」があります。DPP―4は、インスリン分泌を促進するGLP―1を分解しますが、その働きを阻害してGLP―1の働きを増強することで血糖値を下げる飲み薬です。

 また、尿に糖を出す飲み薬「SGLT2阻害薬」も登場しました。腎臓の尿細管で尿中の糖を血管に運び戻す運び屋がSGLT2です。その活動を阻害して糖の再吸収を防ぎ、尿中の糖をそのまま体外に排せつする薬です。この薬は血糖値を下げるほか、心血管イベントのリスク低減、腎臓機能の悪化防止、体脂肪の減少など、さまざまな効果を示しています。

 新しい注射製剤も出ています。その一つが「GLP―1受容体作動薬」です。GLP―1受容体を活性化させてインスリン分泌を促進し、血糖を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制するのが主作用ですが、食欲抑制による体重減などの効果があります。加えて、心血管イベントのリスク低減や、腎保護作用も示されました。週1回製剤もあり、週1回の注射であればがまんできる、と使用する人が増えています。体重の減少がはっきり認められるものがあり、肥満を合併する患者さんに向いています。

 新しい経口GLP―1受容体作動薬の発売が予定され使用しやすいので期待が高まっています。このほかにも、1日1回の注射で終日血糖値を下げる「持効型インスリン注射」は既に広く使用されていますが、効果が1週間持続するインスリンも近く実用化されます。

 小さなセンサーを二の腕などに貼り付けるだけで、血糖値を連続2週間測定できる新しいデバイスも開発され、血糖値の「見える化」も実現しています。

―最近の研究成果について教えてください。

 糖尿病には1型、2型があります。主に小児期に発症する1型は、インスリンを作るベータ細胞が、免疫によって破壊されることで発症します。

 これに対して患者さんの9割を占める2型は、糖質の過剰摂取や肥満などに伴うインスリン抵抗性と膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌の減少によって発症します。高血糖に長時間さらされたベータ細胞は死滅すると考えられてきました。

 当講座は1型でも2型でもない、10歳頃から糖尿病になり、次いで視神経萎縮を合併する「ウォルフラム症候群」という遺伝病に着目し、その原因遺伝子を米国研究機関との共同研究により、世界に先駆け特定しました。 この遺伝子は、ベータ細胞がベータ細胞としての性質を保つために不可欠な存在で、異常が起こるとベータ細胞としての性質が持てなくなり、インスリン分泌をやめます。この現象は、ベータ細胞の「脱分化」だと考えています。特定の機能や形態を獲得した細胞が再び未成熟な細胞に先祖返りすることが脱分化です。 その後の研究で2型の患者さんの膵臓でも、ベータ細胞が脱分化を起こして糖尿病の原因になっていることを明らかにしました。ベータ細胞は死滅するのではなく、異なる状態に移行して休止しているものがあり、そこに新たな治療法の開発の可能性があると私たちは考えています。


山口県宇部市南小串1―1―1 ☎︎0836―22―2111(代表)
http://sannaika.med.yamaguchi-u.ac.jp/

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