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山口大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学講座 実績高い高精度放射線 担う人材の育成は急務

山口大学大学院医学系研究科  放射線腫瘍学講座 実績高い高精度放射線 担う人材の育成は急務

教授(たなか・ひでかず)
2006年岐阜大学医学部卒業。同大学院医学系研究科放射線医学講座助教、
米国立衛生研究所・米国立がん研究所、岐阜大学医学部附属病院放射線科講師などを経て、
2019年から現職。

 がん治療の3本柱の一つである放射線治療に特化した山口大学大学院医学系研究科放射線腫瘍学講座。高い治療効果が期待できる肺がんなどの疾患が増える中、果たす役割はますます大きい。講座の特徴や魅力を、田中秀和教授に聞いた。

―講座の特徴は。

 もともとは放射線医学講座の中に「読影、診断」と「治療」の領域がありました。その2領域が2011年に分かれ、治療に特化した単独の講座として、放射線腫瘍学が開講しました。

 放射線腫瘍学講座の強みの一つが、「呼吸性移動を伴う腫瘍」への放射線治療の研究、臨床です。呼吸によって患部が動くのを加味し、狙いを付けてピンポイントで放射線を当てる動体追跡放射線治療は非常に有効ですが、対応できる医療施設が全国でも限られています。当附属病院では2004年から実施。2015年には、放射線治療装置と動体追跡装置を組み合わせた高精度動体追跡放射システムを取り入れています。

 腫瘍のすぐ近くにマーカーを入れ、腫瘍と一緒に動くマーカーが所定の位置に来たときだけ照射します。放射線を当てる範囲を絞ることができるので、通常のやり方より周辺の部位へのダメージが少ないのが特徴。さらに、患部により多く照射できるため、高い治療効果が期待できます。

 この治療は、精度や安全性を高めたり、治療時間をより短くしたりするため、工学的なアプローチも大切になります。当講座には診療放射線技師の資格を持つスタッフや工学博士もおり、一緒に臨床や研究に取り組んでいます。

―放射線腫瘍学の魅力は。

 対象となる疾患がとても広い。頭も胸もおなかもほぼすべての悪性疾患が治療対象となり、医学生として6年間学んだ知識をしっかりと生かせます。患者さんへの侵襲も少なく、根治を目指せる効果の高い治療であり、お年寄りから子どもまで、あらゆる世代が対象となります。

 治癒だけでなく、症状の緩和も放射線治療の大切な役割です。緩和照射とも言い、がんの痛みに苦しんだり、出血が止まらなかったりしている人の痛みや症状を和らげることができます。患者の年齢や体力の問題で手術ができないケースでも、体への負担が比較的少ない放射線治療で貢献できることは少なくありません。「薬では引かなかった痛みが、放射線で楽になった」と、お言葉をいただくこともあります。がん患者が増える中、治癒はもちろん、痛みの緩和など、研究すべきテーマが多くある分野です。

―山口県の現状と課題を聞かせてください。

 放射線治療分野の全国的な課題ですが、放射線治療医が足りていません。

 国内のがん患者のうち、放射線治療を受ける人は2~3割といわれます。欧米諸国は5~6割。患者にとってメリットの多い治療でありながら、国内での治療機会は圧倒的に少ない。治療を担う医師が少ないことが大きな要因です。県内でも、治療機器はあるものの、常勤の放射線治療医がいない医療施設は少なくありません。より進んだ高精度治療を手掛けるためには、常勤が2人は必要です。

 本来は、県内の幅広い地域で同じ治療が受けられることが望ましいでしょう。状況を改善していくため、一人でも多くの放射線治療医を育成していかなければと思っています。

 まずは何より、医学生に「放射線治療の道に進もう」と思ってもらうことが肝心です。放射線治療医自体の少なさから、外科などと比べて、診療科としての情報や魅力を十分に伝えられていない現状があります。授業や診療科選択に向けた説明会など、学生と接する時間を大切にしながら、PRの仕方を工夫していきたい。もちろん、育成には長い時間がかかります。10年、20年先を見据え、地道に取り組んでいきます。


山口県宇部市南小串1―1―1 ☎️0836―22―2111(代表)
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~radonc/

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