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小児科医とは「子どもの代弁者であること」

小児科医とは「子どもの代弁者であること」


教授(もりうち・ひろゆき)

1984年長崎大学医学部卒業。米国立アレルギー感染症研究所研究員、
米国立衛生研究所臨床スタッフなどを経て、1999年から現職。
同大学院医歯薬学総合研究科&熱帯医学・
グローバルヘルス研究科小児科学分野教授兼任。

 長崎大学小児科は、研究ではベトナムにおける母子感染や県内の希少疾患の遺伝子診断、診療では小児がん等の難治性疾患の治療、地域では発達障害や離島医療への取り組みなど、守備範囲は広く、深い。小児科医に求められることとは何か森内浩幸教授に聞いた。

―小児科医の在り方は。

 小児科医は、子どものアドボカシー(代弁者)でなければならないと考えています。自分の気持ちをうまく伝えられない子どもに寄り添って、その思いを受け止め、代わりに行動することが必要になります。子どもの表情や態度はうそをつかないので、よく観察すれば分かります。大人とは違う意思の疎通を「面白い」と思えることが、小児科医には求められます。
 
 「専門は」と問われたら、「子どもです」と答えます。子どもの体から心まで、すべてを診て、家庭や学校で困っていることまで目を配る「子どもの総合診療医」でありたいと思っています。

 小児科では広い総合診療だけではなく、深い専門的な医療も求められます。その場合、専門分野や他の診療科とタッグを組みチーム医療で対応します。

―離島診療の取り組みは。

 長崎大学では、長崎県と島原地域、五島地域、対馬地域及び壱岐地域が一体となって病院を運営する「長崎県病院企業団」と協力しています。医師が不足している場合には人員を派遣するなど臨機応変な対応でカバーしています。

 しかし、すべての島やへき地に小児科医を配置することは困難ですし、配置された病院でも子どものことであれば24時間365日呼び出される体制では燃え尽きます。

 小児科医が常駐できない場合は、定期的に小児科医を派遣して専門外来を行ったり、小児科医を含めた保健医療従事者による巡回相談を行ったりして対応しています。ICTを活用してテレビ電話での相談や画像データの送付も可能な時代ですから、さまざまな手段で離島・へき地医療を行っていきたいと思います。

―社会の変化に伴う役割は。

 少子化で小児科医は余っているのでは?」と思われがちですが、守備範囲が広くなって、むしろニーズは高まっています。高度な治療を必要とする未熟児、小児がん患者、発達障害や心の問題を抱えた子どもたちを救うのに懸命です。

 子どもを診る上では、すべての診療科、あらゆる職種の方々がチームとなる「幅広さ」が必要ですが、もう一つ「子どもは点(診察時点)ではなく、成長する動く線」として捉えるということも重要です。大人であれば「変わらない」ことが正常でも、子どもでは異常かもしれません。

 子どもたちが無事に成長して「大学に行き就職もできた」「子どもを産めた」など、社会生活を送る上で不利にならないところまで見守る責任があるのです。 

―医局の現状は。

 小児科医を目指す学生が少しずつ増えています。サークル活動で発展途上国に出掛ける学生もおり、そこで出産で母親が亡くなったり、生まれてきた子どもたちが幼くして命を失ったりする現実を目の当たりにします。

 その国の未来は、母親が安心して出産と育児ができ、子どもたちが元気に育っていくことにかかっているのだと実感し、「産科や小児科は重要だ」と気付くようです。日本だって同じなのです。

 また、女性医師の活躍も小児科には欠かせません。小児科は女性医師の比率が高い診療科です。子どもを育てながら仕事ができる環境であることなどを話し合っています。休日の小児科医局では、当たり前のように医師の子どもたちが本を読んだり、おもちゃで遊んだりして親を待っています。

長崎大学病院 小児科
長崎市坂本1―7―1
☎095―819―7200(代表)
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/

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