独立行政法人国立病院機構 福岡病院
𠮷田 誠 院長(よしだ・まこと)
1989年九州大学医学部卒業。九州大学病院呼吸器科、
カナダ・マクマスター大学呼吸器研究部門、
国立病院機構福岡病院統括診療部長などを経て、2019年から現職。
全国に141カ所ある国立病院機構病院の一翼を担う福岡病院は、呼吸器・アレルギー疾患において国内有数の治療実績を有し、全国から患者が訪れる。2019年4月に就任した𠮷田誠院長は、長いスケールで患者さんに寄り添う病院でありたいと語る。𠮷田院長が目指す病院の姿とは。
医師と研究者二つの道を同時に
医師になるか科学者になるか、高校3年生の夏まで進路に迷っていたという。
「最終的には、医師と研究者の両方をできるかもしれないという欲張りな願望から医学部に進学しました」
入学当初は精神医学や心身医学に興味を持ち、精神科や心療内科を専門にすることも考えたが、さまざまな臓器について学ぶようになると、一つの臓器を極めたいという思いが強くなった。
「専門は呼吸器内科を選びましたが、心身医学には今も興味があります。実は、呼吸器疾患を持つ患者さんは、うつ病を発症することが多いのです。偶然ですが、心身医学の知識は呼吸器の治療にも生かせています」
医師としての転機は、研修医2年目のとき。1年目に思っていたほど患者さんを診ることができなかったため、2年目は自ら急性期病院を志願した。
「人工呼吸器で管理をしなければならないほど重症のぜんそくの患者さんを治療するなど、徹底的に鍛えられました。おかげで医師としての自信と覚悟ができました」
地域のニーズに応える
その後、大学院に進学。留学も経験し、呼吸器内科医としての実績を積む。福岡病院への入職は2008年。診療の傍ら大学との共同研究にも取り組んだ。研究者でありたいという欲張りな願望を実現し、院長に就任。新たなステージに立つこととなった。
目下の課題は、入院患者の数を増やすことだ。2019年6月に開設した「地域包括ケア病棟」が起爆剤になることを期待している。
「地域包括ケア病棟は、患者さんや地域にもメリットがあります。患者さんは系統立ったリハビリテーションを受けることが可能になります。呼吸リハビリテーションに特化した地域包括ケア病棟は、福岡市内にはほとんどないので、地域のニーズにもお応えできていると思います」
2019年4月にはアレルギー疾患の中心的な役割を担う「アレルギー疾患医療拠点病院」に福岡県で唯一、福岡病院が指定された。また、歴史ある重症心身障害者病棟は2019年に開設50周年を迎え、12月4日に記念式典を開催する予定だ。
「本病院を支える呼吸器、アレルギー、重症心身障害医療それぞれが節目の時期を迎えています。仕事が増えて職員も忙しいと思うのですが、嫌な顔一つせず動いてくれています」
地域医療に貢献する
立場が変われば見える景色も変わってくる。𠮷田院長は、院長になって患者を長いスケールで診たいと思うようになったという。
「高度急性期から回復期、できれば慢性期までトータルで患者さんを診る病院でありたいと思っています。急性期を乗り越えても病気が完治したわけではなく、一時期だけ診ても意味がありません。当院は診療科が少ないですし、一つの疾患を長いスケールで診ることで病院としての存在価値を高めたいと思っています。0歳から100歳超えまで、年齢においても患者さんを長いスケールで診ていきたいですね」
院長自ら全職員にアンケートをとるなど、職員とのコミュニケーションも大切にしている。人材育成にも積極的で、幹部看護師、認定看護師を増やし、その活動をサポートする環境を整えたいと語る。「今後は、今まで以上に呼吸器、アレルギー、重症心身障害の専門性を高め、地域に密着した医療を提供していきたいと思っています」
独立行政法人国立病院機構 福岡病院
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