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専門外来を立ち上げ遺伝性乳がんの検査、予防を

専門外来を立ち上げ遺伝性乳がんの検査、予防を


教授(たぐち・てつや)

1982年信州大学医学部卒業。大阪大学大学院乳腺・内分泌外科、
京都府立医科大学附属病院内分泌・乳腺外科教授・部長などを経て、2015年から現職。

 遺伝性の乳がんや卵巣がんの患者が、がんのない乳房などを予防的に切除する手術が2020年4月から保険適用となる。京都府立医科大学附属病院では内分泌・乳腺外科内に遺伝専門外来を開設。立ち上げから携わってきた田口哲也教授に、現状と課題を聞いた。

―2018年に遺伝専門外来を開設した経緯は。

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(以下HBOC)に私が初めて深く携わったのは、20年近く前のことです。当時「乳がん診療ガイドライン」づくりが始まり、HBOCの原因遺伝子についての執筆を初版から第3版まで担当しました。また、当時在籍していた大阪大学乳腺・内分泌外科では113の家系を対象に、日本人のHBOC研究を行っており、私も携わっていました。

 その後、京都府立医科大学附属病院に教授として着任した際、「乳腺外科も遺伝専門外来の準備を」と声が掛かり、再び取り組むことになったのです。京都府立医科大学附属病院には遺伝子診療部はありましたが、専門外来の立ち上げとなると、簡単にはいきません。遺伝子情報を扱うためプライバシーの問題、また保険のことなど協議事項は多く、3年半を要しました。

―遺伝性乳がんの検査や治療、適切な予防とは。

 HBOCの高頻度な原因は、BRCA1とBRCA2の遺伝子変異です。この遺伝子変異は、50%の割合で親から子へ、性別に関係なく遺伝することが分かっています。

 乳がん患者全体のうち、HBOCの方の割合は数パーセントですが、2019年度の乳がん罹患(りかん)者予測は9万人以上となっており、決して見過ごせません。

 遺伝子検査は、長らく保険適用外でした。しかし、乳がん・卵巣がんの再発患者のうち、BRCA遺伝子に変異のある方に非常に有効なPARP阻害薬のオラパリブ(商品名:リムパーザ)が2018年に保険適用になったことから、再発の場合は遺伝子検査も保険適用となりました。これにより検査、乳房・卵巣の予防的切除を希望する方が、日本でも急に増加しました。

 発症前の遺伝子検査は自費ですが、特に再発された方やそのご家族を中心に、受診希望者は増えています。遺伝子そのものの治療法はまだありません。陽性の場合の乳がんの予防は、まずはMRIを受け、病変があった場合の切除が推奨されています。

 初期で発見して切除した場合と、乳がんの病変が無い時に予防的切除をした場合では生命予後は変わらないとされています。ただし、20代以降は半年に一度の検査が必要です。

 片方の乳房に病変が認められた場合、反対側の予防的切除は生命予後が延びるという欧米のデータがあります。予防的切除に関してはまだ保険適用ではありません。そのため、混合診療となり、一度に手術ができないなどの課題もあります。

―予防はまず、遺伝子検査を行うことから。

 遺伝子検査は、「陽性かもしれない」という心理的なリスクがあり、検査そのものをためらう方もいます。しかし、適切な予防のためにも、遺伝カウンセラーとも協力しながら、まずは広く正しい知識を持ってもらいたいですね。

 罹患しても、乳がんの治療成績は、早期の場合には飛躍的に向上しています。それにもかかわらず、検査や治療を行わずに悪化しているケースが日本ではまだ多く、非常にもどかしく感じています。

 まずは正しい知識を身に付けてほしい。京都の「ピンクリボン運動」の実行委員長として約10年間活動していますが、啓発活動の難しさをずっと痛感しています。国としての根本的な解決策も待たれますが、まずは同じ志の仲間を増やしながら、「正しく知れば恐れることはない」と訴え続けていきたいと思っています。

京都府立医科大学大学院 医学研究科外科学教室 内分泌・乳腺外科学部門
京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465
☎075―251―5111(代表)
https://www.kpumbreast.com/

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