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子どもの視力低下、超高齢社会だからこそ「目」を向けるべき

子どもの視力低下、超高齢社会だからこそ「目」を向けるべき

 「目」を取りまく環境の変化に対して、予防の意識を浸透させ、疾患への関心を高めるには何が課題なのか。現状から読み解く。

日本人の視力が低下している!

 満5歳から17歳までを対象に発育と健康状態を調査した「平成30年度学校保健統計」(調査期間:2018年4月1日~6月30日)の結果が3月、公表された。

 年齢層によってバラつきがあるものの、2003年度ごろから肥満傾向にある子どもはおおむね減少している。また、1970年代にピークを迎え、90%台だったむし歯については年々割合が下降。中学校、高校で「過 去最低」となった(中学校35・41%、高校45・36%)。

 気になるのは「目」の現状だ。「裸眼視力が1・0未満の者」の割合は小学校と高校で「過去最高」(小学校34・1%、高校67・23%)。中学校も過去最高だった2017年度調査の56・33%と同程度の「56・04%」だった。

 「裸眼視力が0・3未満」に限ると、小学校は9・28%、中学校は25・54%、高校になると実に39・34%を占める。小学校と高校は過去最高の結果となった。

 小児期に強度の近視へと進行すると、黄斑変性症、緑内障、網膜剝離などのリスクが高まることが分かっている。現在、アトロピン点眼薬や多焦点コンタクトレンズなどを用いた、近視の進行を予防する治療の研究が進んでいる。


予防の意識が高まらない理由は

 良好な環境にあるとはいえない現代人の目。しかも予防や早期のケアに対する意識は高まりにくいのが現状だろう。
 40歳から74歳を対象とする特定健診は生活習慣病やメタボリック・シンドロームの発見に重点を置く。眼底検査の目的は、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症などの評価だ。

 眼底検査は前年の検査結果を踏まえて、高血糖、脂質異常、高血圧、肥満の全項目が判定基準に該当し、医師が必要だと判断した場合に実施される「詳細な健診の項目」(心電図検査、眼底検査、貧血検査)に位置付けられている。

 日本眼科医会の研究班がまとめた「成人を対象とした眼検診」(2017年)によると、特定健診が始まった2008年、多くの自治体で眼底検査の受診率が前年度を大きく下回った。

 そもそも特定健診の実施率は51・4%(2018年7月公表:厚労省「2016年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」)。国が目標とする70%までは遠く、眼底検査の実施が伸び悩む一因と考えられる。

高齢化にまぎれて見逃される疾患も

 傷病別の通院者の割合でみると「目の病気」は男性で第4位、女性で第2位(厚労省「2016年国民生活基礎調査」)。目のなんらかの症状に悩む人が非常に多いことが分かる。

 超高齢社会に入り、眼科のニーズがますます高まると予測される中で、加齢による衰えなどにまぎれて「見逃されがち」な目の疾患もある。例えば「眼瞼下垂」もその一つだろう。

 眼瞼下垂は「目を開いたときに上眼瞼縁が正常の位置(くろめの上方が少し隠れる高さ)より下がっている」状態のこと。視野が狭くなり、重そうなまぶたは外見的にもいい印象を与えづらい。先天性と後天性があり、後天性で最も多いのは「加齢性」だ。

 加齢で眼瞼挙筋(まぶたを上げる筋肉)と皮膚などの結合がゆるむことが主な原因。目をこすって刺激を与えたり、コンタクトレンズの使用が影響したりするともいわれる。目の状態に早くから気を配っておくことが予防につながる。

 病名の認知度は徐々に高まっていると思われるが「手術治療が必要な病気」であり、「手術は保険適用」であることは十分に知られていないのではないか。

 その実態を探ろうと、アイシークリニックを運営する医療法人社団鉄結会がStock Sun(ともに東京都)に委託して調査を実施した(別表)。

 眼瞼下垂を「知っている/聞いたことがある」と答えたのは、調査対象の1500人のうち261人、17・4%にとどまった。

 また、眼瞼下垂と診断されて「手術を受けた」と答えたのは25%強で、手術を受けなかった人の理由としては「金銭的な不安」が最多。手術に保険が適用されることは認識されていない事実が示された。

 医療費で老化に伴う疾患が占める割合は15・6%。眼科領域は関節など筋骨格系の疾患、骨折に次ぐ1兆1085億円。国が予防医療を強化する方針を掲げる中、目の疾患への関心をどう高め、適切な治療につなげるか? 今後の重要なカギをにぎっているのは間違いないだろう。

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