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子どもの脳機能を測定 自閉スペクトラム症解明へ

子どもの脳機能を測定 自閉スペクトラム症解明へ


菊知 充 教授(きくち・みつる)

1994年金沢大学医学部卒業。同附属病院神経科精神科、
スイス・ベルン大学附属精神病院精神生理学教室、
金沢大学子どものこころの発達研究センター特任教授などを経て、
2019年から現職。同附属病院子どものこころの診療科長兼任。

 1909年の創設以降、北陸3県における精神科医療の拠点となってきた金沢大学。9代目となる菊知充教授はこれまでの研究に加え、自閉スペクトラム症(ASD)の病態メカニズム解明という新たな道を切り開いた。

―石川県における精神医療の現状は。

 比較的、精神医療は充実している地域です。精神科ベッド数は全国平均ですが、人口10万人当たりの精神科医は12人強と、関連病院に医師を不足なく派遣することができています。地域の精神医療をしっかり守ることが、当教室の重要な役割です。

 関連病院の中で急性期医療は、スーパー救急病棟を持つ石川県立高松病院と松原病院が担っており、精神科救急でたらいまわしが起きないよう体制が整っています。総合的な治療が必要となる身体合併症治療は、県内の五つの総合病院の精神科が対応しています。

―ASDの病態メカニズムの解明について。

 「金沢大学子どものこころの発達研究センター」と一緒に研究を進めています。同センターは、大阪大学など五つの国立大学法人が集まった連合大学院の一つ。各大学の得意分野を生かし、お互いに協力し、子どもの教育、発達に関する研究を行っています。私も10年在籍、今も兼任です。

 これまでに、発達障害の子どもたちの脳機能を調べる装置を開発しています。リコーと共同開発した幼児用脳磁図計(幼児用MEG)は、神経の活動を高感度で捉え、脳の機能を評価する装置で、世界でもまだ数台しか設置されていません。

 そこで目指したのが早期診断の実現と適切な介入です。発達障害の課題である多様性をどうすればひも解いていけるか、聴覚、視覚、運動、コミュニケーション、脳のネットワーク、睡眠から調べていきます。特に、親子同時測定が可能な本学にある幼児用MEGを活用すれば、親子のコミュニケーション中の脳の測定が可能です。

 聴覚の測定では、「ねぇ」という声に対する反応を調べた結果、発達状態や知能を予測できる可能性が見えてきました。ボタン押しの検証では、不器用さが脳活動にどんな特異的変化をもたらすかが判明。さらにモニターで見つめ合う親子を同時測定すると、社会性の障害に関する指標が検出され、重症度と関係することが分かりました。

 介入試験も進めていきます。現在、親子がリズムに合わせて動き、同調度を測れるデバイスを開発中で、2020年秋ぐらいに完成予定です。同調する喜びを感じながら親子の関係性を強化できるだけでなく、コロナ下にあっても、私たちがご家族の中に遠隔で介入できるツールにもなると、期待しています。

―今後の目標は。

 一つは、早期診断システムの確立です。発達障害は環境とのミスマッチで二次的に問題行動が起きやすく、小さい頃につまずくと大人になるにつれ統合失調症や重度うつの発病リスクが高まります。脳機能を早期に調べ、本人の特性をデータで示せれば、周囲の理解も進むでしょう。

 二つ目は、病態に基づいた診断システムの確立です。精神疾患は生物学的指標がなく、表層的な症状で診断がつきます。発達障害も同様です。研究で得た生物学的指標を体系化できれば、病態に基づく診断に近づけます。効かないと思われていた薬の効果が確かめられるかもしれません。

 PETが使えない子どもに幼児用MEGを用い、ASDと定型発達、合わせて500人ほどのデータを集めてきました。かなり有望な指標もあれば、何を示しているか本質がつかめないものもある。まさに一喜一憂の連続です。10年かけて見えてきたものの背後には、まだ多くの宝の山がある。これからも、突き詰めていきたいですね。

金沢大学医薬保健研究域医学系 精神行動科学(神経科精神科)
金沢市宝町13―1
☎076―265―2000(代表)
https://psychiatry.w3.kanazawa-u.ac.jp/

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