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子どもの成長を間近で心も体もまるごと診る

子どもの成長を間近で心も体もまるごと診る


教授(まつお・むねあき)

1985年佐賀医科大学(現:佐賀大学)医学部卒業。
鹿児島市立病院、米ケンタッキー大学留学、佐賀大学医学部小児科准教授などを経て、
2014年から現職。

 佐賀県内の小児医療の拡充を担っている佐賀大学医学部小児科。小児神経専門医として病気や障害のある子どもたちや家族と日々向き合っている松尾宗明教授に、小児医療の特徴や課題を聞いた。

―小児科の魅力は。

 子どもは心も体も日々成長して変化し続け、機能を少しずつ獲得していくのが成人と大きく異なる点です。現在の医療は臓器別に診療科が編成されるなど細分化が進んでいますが、小児科は聴診器だけで診断していた時代のような感覚が今も色濃く残っていて、患者さんをトータルな視点で診る総合診療が特徴だと考えています。

 小児科医には、疾患の治療だけでなく、子どもの家庭環境も把握して成長を支援していくことが求められます。私は子どもたちの日々の成長を肌で感じられることが非常に楽しく、魅力にも感じてこの道を歩んできました。

―人材育成で重視していることは。

 学生や若い医師には、「経験は大切だが、正しく経験しなければいけない」と常々伝えています。病気はたまたま悪くなったり、逆に良くなったりすることがあります。例えば、ある薬を使ってたまたま効果があると、次の患者さんにも同じ薬を使いたくなるもの。しかし、思い込むことは大変危険です。

 本当に治療方法が正しかったのか、検証をしながら経験を積んでいかないと独り善がりの誤った方向に進んでしまうことがある。簡単なようで難しいことですが、客観的に正しく評価していくことが大切です。自分の経験をどのように理解して他の人に論理的に説明するかという検証の方法も重要で、当教室ではこうしたディスカッションにも力を入れています。

―現在進めている研究は。

 難病の「もやもや病」の研究に取り組んでいます。原因不明の脳血管の病気で、小児では一過性の脱力発作やけいれんを起こします。当教室では、もやもや病の患者さん由来のiPS細胞を血管内皮細胞に分化させて、通常の血管と比較して性質にどのような違いがあるかを調べています。

 これまでの私たちの研究では、もやもや病の患者さんは血管内皮細胞が血流によるストレスに弱い特性があることが分かっていて、そこが傷つきやすいことで病変ができるのではないかという仮説を立てています。さまざまな角度から検証している最中で、新たな治療法の確立につなげることが目標です。

―小児科を取り巻く課題は。

 国は小児の在宅医療を推進していますが、課題が山積していると感じます。病院や施設で治療を受けなければならなかった子が、医療を必要としながらも自宅で生活できることはQOLの向上につながると思いますが、世話をする家族の負担は増えます。保護者が仕事に行けないどころか、買い物に出かけるのさえ難しくなるような生活を強いられないようにするため、子どもを預ける施設の拡充やシステムの充実を図ることが求められます。

 小児科医の労働環境も改善していく必要があります。当教室は女性医師が4割を占めていて、子育てをしている医師もいます。小児科は時間外の診療が多い傾向がありますが、子育て中の医師は、夜間の勤務に入るのが難しい。院内に託児施設を設置するなど、医療の提供体制を崩さないために、危機感を持って対応していかなければならないと感じています。

 近年は病院だけでは医療が完結しないことが多くなっていて、産婦人科など他の診療科や行政と連携することの重要性が高まっています。虐待への対応も含めて、未来を担う子どもたちの健やかな成長を、今後も医療で支え続けていきたいと思っています。

佐賀大学医学部小児科
佐賀市鍋島5―1―1 
☎︎0952―31―6511(代表)
https://www.pediatrics.med.saga-u.ac.jp/

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