九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

始まりはいつも患者の声 HPV検査に新たな道を

始まりはいつも患者の声 HPV検査に新たな道を

福井大学器官制御医学講座 産科婦人科学分野 吉田 好雄 教授(よしだ・よしお)
1988年福井医科大学(現:福井大学医学部)卒業。
イスラエルワイツマン研究所留学などを経て、2012年から現職。

 「すべての患者さんから学ぶ」。初代教授が掲げた教室のモットーは、3代目の吉田好雄教授にも受け継がれている。地域住民の協力を得て進めている子宮頸がんに関する研究にも、その精神が生かされている。

―子宮頸がんの患者は若年女性が中心。年間約3000人が亡くなる。検診の研究内容は。

 2012年、細胞診とHPV(ヒトパピローマウイルス)検査の併用検診の調査研究を始めました。

 国内の子宮頸がんの検診は、現在、細胞診を中心に実施されています。子宮頸部細胞診が最も有用なスクリーニング法だと考えられていましたが、HPV検査との併用検診の有用性が分かってきました。

 子宮頸がんの主な原因はHPVの感染だと考えられています。100種類を超えるHPVのうち、特にがんに移行しやすいハイリスクのタイプも判明。しかし、併用検診にどれくらいの有用性があるのかはまだ明確ではありません。それを明らかにすることが研究の大きな狙いです。

 福井県で調査を開始した理由として、地域的な特性が挙げられます。

 人口の流出が比較的少なく、患者さんをフォローしやすいということ。次に、県内で行われた検診の検体すべてが、がん検診事業などを展開する「公益財団法人福井県健康管理協会」に集まるシステムがあること。

 これまでに約7500人のデータを収集。興味深い結果が得られています。例えば、細胞診では陰性であっても、HPV検査で感染が明らかになることがあります。精密検査を実施すると、すでに異型上皮になっていたというケースなどがありました。現在、最終的な取りまとめの作業を進めているところです。

―新たな研究もスタートしました。

 今年から取り組んでいるのが、子宮頸がんの自己検査キットによるHPV検査と、医師によるHPV検査との比較です。

 日本は、世界各国と比較しても子宮頸がん検診の受診率が低いと言われています。患者さんになぜ受診しないのか、その理由を尋ねてみると「内診が恥ずかしい」「時間がない」といった声が多く聞かれます。

 そうした方々に関心を持っていただき、病院での検診につなげるきっかけとして、自己検査キットの活用が考えられます。例えばスウェーデンの論文によると、自己採取を取り入れたことで受診者が約5%増加したという報告もあります。

 研究の目的は、自己採取キットの有効性を明らかにすることです。海外で広く使用されている検査キットを採用しましたので、諸外国の臨床研究のデータとの比較も可能です。

 医師による検査とほとんど差がないという結果が得られれば、福井県と共に自己採取キットを活用した新たな検診の仕組みを整えたいと考えています。検査キットによる本格的な臨床研究が実施されるのは、国内では初めてです。

 現在までに、およそ70人のデータを集めることができました。まずは100人程度が目標です。年内いっぱいで取りまとめて、早めの報告を目指しています。

―教室の運営において大事にしていることは。

 教室が伝統的にモットーとしているのは「すべて患者さんから学ぶ」ということです。私が取り組んでいる「子宮筋腫と子宮肉腫の分子イメージングによる鑑別方法」の研究も、患者さんのために、より低侵襲な検査ができないかという発想から生まれたものです。

 この地方においても、産婦人科の医師不足は深刻な状況です。体制が十分ではない中、新たな検診や検査方法などで不足を補うという発想がより重要となるでしょう。この教室の研究が女性の妊孕(よう)性の維持や健康に貢献できれば、とてもうれしいですね。

福井大学器官制御医学講座 産科婦人科学分野
福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23―3
☎0776─61─3111(代表)
https://sankafujinka.com/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる