九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

始まった次代の医療 けん引できる人材を

始まった次代の医療 けん引できる人材を

佐賀大学医学部附属病院 呼吸器内科 荒金 尚子 診療教授(あらがね・なおこ)
1987年佐賀医科大学(現:佐賀大学医学部)卒業。埼玉県立がんセンター、
米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターなどを経て、2015年から現職。

 専門領域は肺がん。診療教授として臨床、研究の第一線に立ち、佐賀大学医学部附属病院がんセンター長も務める呼吸器内科の荒金尚子氏。現在、国が進める「第3期がん対策推進基本計画」が目指すのは「がんの克服」。荒金氏の視点を通して、呼吸器領域におけるがん医療のこれまでとこれからに迫った。

―なぜこの領域を専門に。

 佐賀医科大学(現:佐賀大学医学部)を卒業し、研修医として内科に入局した当時、治療で最も苦労した疾患が肺がんでした。

 現在ほど抗がん剤の種類も多くはなく、患者さんはとても苦しい思いで治療を続けながらも、なかなか効果が得られない状況がありました。例えばステージ4の場合、診断から1年が経たずして亡くなるケースも少なくなかったのです。

 また、患者さんやご家族に対してどのように診断結果をお伝えするのかなど、さまざまな面でがん医療の仕組みが整っていないと感じていました。

 そうした現状をなんとか変えることができればと考え、埼玉県立がんセンター、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究員として、がん治療の基本を学びました。

 MDアンダーソンがんセンターでは、主にビタミンA誘導体の一種であるレチノイン酸のがん再発予防効果などに関する実証研究に取り組みました。

 2000年に当学に戻って以降は、肺がんのバイオマーカーの臨床研究のほか、近年は血液などを用いて低侵襲でがん組織の検査を可能にするリキッドバイオプシーの研究にも力を入れています。


―がんセンターについて教えてください。

 佐賀大学医学部附属病院がんセンターが開設したのは2009年のことです。

 まず2001年、診療科の垣根を越えた横断的臨床腫瘍班が立ち上がりました。2005年には、「がん薬物療法専門医」の育成施設として日本臨床腫瘍学会の認定を取得。現在、多職種が連携して多様ながんの診療を展開しています。

 センターの役割は、佐賀県におけるがん医療の中核施設として質の高い医療を提供しつつ、地域の医療機関や住民へ向けて正しい情報を発信することです。

 佐賀県のがん診療連携拠点病院として、県内の他の拠点病院である佐賀県医療センター好生館(佐賀市)、唐津赤十字病院(唐津市)、嬉野医療センター(嬉野市)と協力してがん医療の底上げを図ります。

 当センターでは各がん専門医、がん薬物療法認定薬剤師、がん専門薬剤師、がん看護専門看護師、メディカルスタッフらがチームとなって、外来化学療法から緩和ケア医療、就業支援まで多岐にわたる診療やサポートに取り組んでいます。

 週に1度、複数の診療科が集まって症例や治療方針を検討する「キャンサーボード」の開催も活発です。


―今後のがん医療について、どのような点に注目していますか。

 次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析によって一人一人の体質や症状に合わせた治療を可能にするがんゲノム医療。今年、「がん遺伝子パネル検査」の保険適用が見込まれるなど、がんゲノム医療をめぐる動きが本格化します。

 全国に11カ所あるがんゲノム医療中核拠点病院を中心に、当院を含む各地の連携病院が、がんゲノム医療の推進役を担います。

 当院は京都大学医学部附属病院と連携。ウェブカンファレンスなどを通じて臨床試験や遺伝子変異などの情報を共有し、がんゲノム医療の研究を進めているところです。

 私たちが積み重ねるエビデンスは、いずれ新たな治療法や薬剤の開発につながるでしょう。こうした次世代の医療に対応し、けん引できる人材を輩出する。佐賀大学の重要なテーマであると捉えています。


佐賀大学医学部附属病院 呼吸器内科
佐賀市鍋島5─1─1
☎0952─31─6511(代表)
http://www.saga-hor.jp/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる